女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「令和4年新春ベストコレクション」

2022年1月10日

特集「令和4年新春ベストコレクション」⑩
水を抱く女(下)(2021年 ファンタジー映画)

監督 クリスティアン・ペッツォルト

出演 パウラ・ベーア/フランツ・ロゴフスキ

シネマ365日 No.3807

硬派な「水の精」

特集「令和4年新春ベストコレクション」

水の精の掟では裏切った男を殺さねばならぬらしい。そしていったん水に戻れば二度と人の姿になれない。ウンディーネはヨハネスを殺したけど、クリストフは殺さなかった。彼から電話を聞いたのは彼の死後に間違いないから、彼の魂が話しかけてきたのだと思わざるをえない。すれ違った時自分がヨハネスに振り向いたせいで、彼と何かあったと知ったクリストフは、それがストレスになって水中で怪我し脳死状態を招いた。申し訳ない、せめて彼を生き返らせ、自分はルール通り二度と人の姿に戻れなくなっても仕方ない、そう思ったってことでしょ。な〜んだ。要は女性の自己犠牲の物語かい。クリストフはモニカと幸福に暮らし、子供も生まれるだろう、でもどうぞ心の中で私を思い続けてちょうだい…に落ち着くのかいな▼水の精というこの世にあらざる存在をヒロインにした手前、ファンタジーに着地するのはやむをえないとしても、女性目線というからには、例えば「リベンジャー」のケイト・ウィンスレットみたいに、村を丸ごと灰にするえげつない女だとか、イザベル・ユペールの「女の復讐」みたいに、どっちが頭か尻尾かわからない正体不明の女だとか、何か隠し玉のような企みがあるだろうと思ったのだけど。やっぱり「東ベルリンから来た女」と同じ、自分の意思を曲げない硬派な水の精に仕立てたところが、監督がヒロインに与えたアイデンティティだったのね。そういうことにしようっと。ドイツの映画らしくベルリンの都市計画の変遷や東西統合の歴史やらが挟まって、一言で言うとベルリンは「沼地」という意味で、だからウンディーネはここを離れないのか、と思わせるとか、バッハのバイオリン協奏曲の旋律がピアノソロでバックに入るなど、神秘性を高める手立ては充分になされ、雰囲気はよかった。よかったけど「女性目線」に関してだけは私の空振り、思い込み違いだったわ▼監督は本作のテーマがすっかりお気に入りで「水の精」に続く「地の精」「火の精」も製作が視野に入っているそう。パウラ・ベーアはドイツ映画界の期待の星らしい。そういえばフランソワーズ・オゾン監督の「婚約者の友人」でヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞、本作でベルリン国際映画祭女優賞、ヨーロッパ映画賞女優賞を取っている。ベルリン国際映画祭は女優賞、男優賞を撤廃し「主演俳優賞」「助演俳優賞」に統一するから、彼女が最後の女優賞だ。本作はいたるシーンで水の映像と音の演出がなされるけど、潜水夫のフィギュアがいちばん暗示的で可愛らしかったな。

あなたにオススメ