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特集「令和4年新春ベストコレクション」

2022年1月17日

特集「令和4年新春ベストコレクション」⑰
ムッシュとマドモアゼル(1981年 恋愛映画)

監督 クロード・ジディ
出演 ジャン=ポール・ベルモンド/ラクエル・ウェルチ

シネマ365日 No.3814

さよなら、ベルモンド

本作はスタントマンと人気俳優の二役をベルモンドが演じ、トム・クルーズも学んだという危ないスタントを劇中やってのける。これは多くの映画ファンがどこにでも書いていることだから繰り返すのはやめよう。ラクウェル・ウェルチのゴージャスな美女ぶりもまたの機会に譲ろう。本作を見ながらたくさん観たベルモンドの作品が思い浮かぶ。彼はコメディにもアクションにも強かったが、ふとした拍子に見せる絡み合う細やかな表情に、エも言えない「かそけさ」があった。「雨のしのび逢い」でのジャンヌ・モローとの共演。貧しい行員の男が安酒場にふらりと入ってきた工場長の妻と知り合う。夫との結婚生活に希望をなくした妻は、青年の孤独に魅かれる。言葉をかわすようになるが青年は踏み込んでこない。彼は街を出る、それは「あなたのためです」と告げる。このまま一線を越えても破局は見えている。失うものは自分より女の方が多い。絶望する女に「あなたは死ねばいい」と突き放す。ジャンヌ・モローはこう来る。「もう死んでいるわ!」。男は走り去り深夜の酒場に女の絶叫が響く▼「ボルサリーノ」はアラン・ドロンのオッファーだった。人気絶頂の組み合わせだった。カミソリのようなドロンに、どことなくミルクの匂いを付けたようなベルモンド。彼は豪気な男だがしゃかりきに頂点と目指すドロンと正反対。好きな女と美味しいものを食べ、気楽に暮らせたらいい。でも彼は忠実にボス・ドロンを助ける。喧嘩別れして去ったベルモンドを強がるドロンは追いかけず、ひとりカジノに座る。ベルモンドは大人の男である。ほとぼりの冷めた頃合いを見てドロンの元に戻る。勝負しようとする彼の背から声をかける。「ご一緒に、ムッシュ」。目だけで笑う男のやさしさにクラクラした。「相続人」もよかった。欧米合わせ20位以内の富豪の御曹司、ハーバードで学び父の死を受けて相続人となった男。富と度胸にものを言わせ、父親を謀略にかけたライバル社を潰しに出る。女にもてる。数両の列車を丸ごと調達して誰も乗せず、女と2人きりになり口説く。強引なやり口に女がひっぱたくと、否やもなくビンタを張り返す。自分が狙われていることを知り息子に言い置く。「お前は普通の男の子じゃない。相続人だ。覚えておけ」▼しかしやっぱりこれがよかった。「薔薇のスタビスキー」である。詐欺師でありペテン師であり、いかがわしい匂いを発散する男がエレガンスでさえあった、スタビスキーという人物。有名人であるセレブの青年の求愛に「スタビスキーが好きでどうしても離れられないのです」と女は断る。女だけではない。彼に全財産をつぎ込んだ男はそれでもスタビスキーを憎まない。ヘナチョコな俳優がやるとギャグでしかない男性像を、過不足ない貫目でベルモンドが演じた。作家性の監督、「スタビスキー…」のアラン・レネや「二重の鍵」のクロード・シャブロルのオッファーを受ける俳優でもあった。味があるのだ。娘パトリシアを溺愛していた。離婚・再婚もあったが憎めない男とは彼のようなキャラだろう。2021年9月6日、ジャン=ポール・ベルモンドは逝く。88歳。フランス映画が寂しくなった。

 

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