女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「B級映画に愛をこめて」

2022年1月27日

特集「B級映画に愛を込めて19」①
トラブル・ウィズ・ユー (2020年 コメディ映画)

監督 ピエール・サルヴァドーリ

出演 アデル・エネル/ピオ・マルマイ/オドレイ・トトゥ

シネマ365日 No.3824

無理がありすぎる

特集「B級映画に愛を込めて19」

夫は地元の治安に貢献した熱血警察官として銅像が建つ。結婚8年、若くして未亡人となったイヴォンヌ(アデル・エネル)は現職の刑事だ。取り調べ中の情報屋から、夫の逮捕により収監中の男アントワーヌが、実は無実で夫ジャンの身代わりになったものと知る。夫は汚職に手を染めていた悪徳警官だった。幼い息子テオにパパをスーパーマンのように語って聞かせていたイヴォンヌは「クズ男と過ごした8年間」に憎しみさえ覚える。実刑8年を終えたアントワーヌは出所する。失われた8年は彼も同様だ。せめてもの償いとして幸せになってほしい。イヴォンヌは密かに彼の行動を監視した。彼は社会不適合者となっていた。とめどなく独り言を繰り返し、人に話しかけるが会話が成り立たない。バスで乗り合わせた婦人を理由なく侮辱する。様子を伺っていたイヴォンヌはかなりやばい状態であると判断し、なおさら彼を放っておけなくなる▼アントワーヌにはアグネス(オドレイ・トトゥ)という妻がいる。夫は相変わらずやさしかったが、どこか「からっぽ感」がある。ムショ帰りだから無理もない。アグネスは辛抱強く付き合い、レストランに連れて行き、食事し、外の世界に馴染ませた。アントワーヌは時として豹変した。タバコを買いにコンビニに入るとそこで強盗、酔っ払いがアグネスに絡むとあわや、死ぬほど殴りつける。それを物陰から見ているイヴォンヌはますます危機感を募らせる。イヴォンヌの同僚の刑事ルイはイヴォンヌが好きだった。息子テオも彼に懐いていた。8年間彼が警官をやめなかったのはイヴォンヌのそばに居れるからだ。イヴォンヌは夫の汚職を知りながら止めなかったルイを責めた。今さらだが。ある夜川に飛び込んだアントワーヌは、後から女が泳いできて助けようとしたのに「俺は泳ぎたくて入ったのだ」と嘘をつく。実は自殺未遂だった。自信をなくして生きる気力も妻の愛も信じられなくなった男に、あなたには権利があるとイヴォンヌは吹き込む。吹き込むとしか言いようがない。男は「それなら」と宝石強盗をやるのだ。本当にやってはいないことで罪になったから、今度は実行することに「権利がある」らしい▼段々この映画にはついていけなくなる。ルイはイヴォンヌと結ばれた翌日から舞い上がり職務放棄。人を殺したと自首してきたおじさんの聴取も上の空で、ルイ刑事が自分の訴えを信じていないと思ったおじさんは、証拠として殺した女性の腕や身体の部位を持って署を訪問するようになる。イヴォンヌはアントワーヌに正体がばれ、これ以上先には進めないとわかる。で、何をしたか。宝石店にアントワーヌと共に押し入り、警備カメラに顔を晒す。駆けつけたパトカーによってイヴォンヌは逮捕。刑務所行き。アントワーヌは逃亡した。彼が宝石強盗を働いたのは、妻が「庭にいっぱい宝石を埋めてくれていた」のを夢で見た、と言った夢を叶えてやるためだ。出所したイヴォンヌは家で、ずっと息子の面倒を見てくれていたルイと一緒に暮らすことにする▼途中から一挙にファンタジーになった物語に無理がありすぎる。殺人犯を野放しにする刑事ルイ、罪悪感から強盗をやるイヴォンヌ。妻の愛がわかりながら漂流することをやめないアントワーヌ。人はみな弱いのだ…これが本作の言いたいことだとすれば、自らの弱さを知りながらコツコツと日常を生きている、勇気ある人々はどうなる。そういうリアリズムで見る映画ではないとしても、迎合する気にはなれません。

あなたにオススメ