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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2022年2月5日

特集「美しい虚無14」⑤
インテリア(上)(1979年 家族映画)

監督 ウッディ・アレン

出演 ジェラルディン・ペイジ/ダイアン・キートン/E .G.マーシャル

シネマ365日 No.3833

母親は家族のガン?

支配的な妻から逃走したくて別居し離婚を申請、再婚する夫。夫の再婚に絶望して自殺する妻。残された娘が3人、それぞれ問題を抱えているというのがアウトライン。冒頭の夫アーサー(E.G.マーシャル)の独白「ロースクールを中退したとき彼女に会った。美しかった。黒のドレスに包まれた蒼い涼しさ。飾りは一連の真珠だけ。遠かった。常に遠く平静だった。娘3人が誕生。完璧で秩序ある生活。いま思えばそれは冷たかった。イブ(ジェラルディン・ペイジ=妻)が作った世界に私たちは住まわされていた。混乱を許さない調和の世界。巨大な威厳。さながら氷の宮殿だった。ある日私たちは突然気づいた。お互いの間の超えがたい淵。赤の他人を見る思いがした」…いきなりこう書くのも気がひけるのだけど、おかしいンじゃない、このお父さん。彼は成功した実業家で裕福な暮らし。娘たちは夫や仕事に悩みはあるが、世間に出して恥ずかしい存在ではない。お父さんは「私たちは」と言っているけど、娘3人は母親に拒否反応を示しているわけではない。つまり「もう耐えられない、あの妻だけは勘弁してくれ」というお父さんだけの、さらに言うなら女所帯のただ1人の男である、男性の女性逃避願望からこの映画は始まるわけね▼で、どんなえげつない妻であり母親であるかというと、次女ジョーイ夫婦の住まいに来た母親が「いいものを見つけた」と言って400ドルもする花瓶を買ってくる。婿のマイクはえらく驚き、そんな勝手なことしてもらっちゃ困る、今まで母親が何度も模様替えしてその度手直しして出費続きだと抗議。試験的別居を切り出した夫アーサーは今ギリシャにいる。イブは別居に気が進まず、というよりなぜ夫が別居したがるのかわかっていない。長女のレナータ(ダイアン・キートン)は詩人として名をなすが夫のフレデリックは作家とは名ばかり、ヒット作も出世作もない。細々と文芸批評を書いて他人の作品をこき下ろし溜飲を下げている。ジョーイはパパっ子で母親と気が合わない。夫のマイクは広告会社勤務、ジョーイも同じ仕事についているが(ふん、たかが広告取りの仕事)と腹の中でバカにしている。女優もやったがウダツが上がらず引退した。三女のフリンは女優であるものの端役ばかり、なんとかテレビで食いつないでいる▼例によってウッディ・アレンがジメジメと、番長皿屋敷の皿さながら「いちま〜い、にま〜い」と家族の潜在心理を剥がしていきます。本作は母親と3人の娘と父の再婚者パールの5人の女性の物語で、男性たちは薄い影のごとく存在感がありません。妻がすでに恐怖となった夫。次女の夫は義母の強引な趣味の押し付けになすすべがない。長女の旦那は書けない才能を人のせいにして妻に嫉妬するばかり。三女の彼氏は…いたと思うけど記憶にも残らない。精神的に不安定になっていたイブは別居によってさらに症状が悪化、精神病院に入院し、ショック療法など受けて、退院してきたときは髪が白くなり、やつれはて面変わりしていた。母親を一人住まいさせておくのはさすがに気がひける。レナータは同居してもいいらしいが、夫は言を左右して遠回しに「ノー・サンキュー」。イブはついにガス自殺を図った。一命はとりとめたが家族は奈落に地滑りしていく。イブは家族のガンなのか? そうだと言っているのと同じなの、この映画は。

 

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