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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2022年2月10日

特集「美しい虚無14」⑩
ザ・ライトハウス(下)(2021年 スリラー映画)

監督 ロバート・エガース

出演 ロバート・パティンソン/ウィレム・デフォー

シネマ365日 No.3838

人は自分の心の中にあるものしか見ない

嵐が灯台を直撃した。散乱した室内でウィズローは、ウェイクが本部に提出する日報(部下の勤務評定)を見つけた。いつも鍵のかかる引き出しに入れていたが机が壊れてしまったのだ。それを読んだウィズローはこう切り出す。「あんたにとってエイハブの真似をするのは、惨めだっただろ。その脚も船乗りの暮らしも船長だったことも嘘っぱちだ。腐った歯が臭う口でジジイの戯れ言をぬかすな。たかが灯台守のくせに、なぜそう偉そうにする。あんたの臭い息やいびきや垂れ流す屁も耐えられねえ。酒に溺れホラを撒き散らす。報告書を読んだぞ。助手は朝寝坊、態度は敵対的、倉庫で自慰にふけってばかり。無給で解雇するよう進言する…俺を破滅させる気か」「お前は自分を欺いていることに気がつかないだけだ」「灯室に入れてくれ。あんたから多くを学んだ。チャンスをくれ」「出て行け」「すべて独り占めか。何のために女房や子供を捨てた?」「お前はキレイな顔をしている。女のように輝く瞳だ。孤島に来て強がってみせ、不機嫌なフリで笑わせる。無口を装っているがお前に謎なんかない。絵のように明白だ。照明を浴び大声で叫ぶ女優のようだ。生まれただけでもマシだったのに、銀の匙が欲しいとわめく。泣いているのか。わしを殺す気か。カモメを殺したように」このシーンはセリフの呼吸が絶品の、本作のクラマックスです▼ウィンズローはウェイクを殴り倒し、首に縄をつけて犬のように引きずり、穴の中に突き落とすと土をかぶせ、ポケットから灯室の鍵を取り出した。土が入った口をパクパク「灯室に何があるか見たいか。前の助手と一緒だ」。途中まで生き埋めにしたまま灯台に向かうと、穴から這い出したウェインが「灯室はわしのものだ」喚くなりツルハシでウィンズローの肩にグサッ。奪い返したウィンズローはウェイクに降り下ろし絶息させた。「タバコが吸いてえ」とつぶやく。灯室への長い螺旋階段を這いながらウィンズローが登っていく。弱々しい力で鍵を回し中へ。何枚もの分厚い大きなレンズが光を放つ。ウィンズローは光の正体を見定めようと凝視したが、目がくらみ墜落した。カモメが数羽、ウィンズローの全裸の死体をついばんでいる。くちばしで腸を引っ張り出し、別のカモメは眼球を抉り出した。まだまだたくさんのカモメが空を舞っていた▼ウィンズローの妄想である人魚、巨大なタコの足などは性的暗喩です。孤島の隔離生活のなせる技か、ではなく監督はあくまでウィンズローの脳が描かせる「謎」として扱いたいみたいです。だいたいこの人、解決や回答を与えることを拒否したスタンスで映画を作りますから、因果関係の明瞭な答えなどどこにもありません。2人の男が狂って殺しあった、それだけをドラマにしています。当然、演者2人に大きな説得力が要求されますが、ロバート・パティンソンもウィレム・デフォーも怪しい精神状態に陥っていく男をおどろおどろしく、江戸川乱歩調に好演。人は自分の心の中にあるものしか見ない。その真実を映像化した力技に敬礼。

 

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