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令和4年2月のベストコレクション

2022年2月15日

特集「令和4年2月のベストコレクション」⑤
ブラックバード家族が家族であるうちに(上)(2021年 家族映画)

監督 ロジャー・ミッシェル

出演 スーザン・サランドン/ケイト・ウィンスレット/ミア・ワシコウスカ/サム・ニール

シネマ365日 No.3843

死の段取り

 ちょっと違和感がありました。主人公のリリー(スーザン・サランドン)は末期のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者、歩行が困難で右腕しか使えない、数週間もすれば寝たきりになり話ができず物ものみ込めなくなる、体に機械をつけられ呼吸も唾をのみ込むのも自分でできない、栄養はチューブで胃に入れる。そうなるのはイヤだ、まだ自分の体が動くうちに死ぬと彼女は決めた。夫のポール(サム・ニール)は医師だ。安楽死は違法だが息を引き取った後の段取りも冷静に妻と話し合った。それはそれで尊重します。しかしもし私の母だったら安楽死を選ぶことで子供達が苦しむだろう、悲しむだろうということをまず考えると思うのよ。死後の届け出とか薬物の手配とかに、協力者は1人(旦那か友人かは)要るだろうけれど、リリーみたいに家族全員を集め、死出の送別会みたいな盛大なパーティーをやるかしら…というのが違和感です▼でも映画はやっちゃったのだからそれに沿っていこう。長女のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)と夫、息子ジョナサン、次女のアナ(ミア・ワシコウスカ)とレスビアンのパートナー、クリス、リリーの長年の親友リズが集まった。本作の核は母親と姉妹の関係です。長女は母の選択に賛成だが次女は反対だ。次女は長年疎遠だったがこの日の招集で実家に来た。長女は理屈っぽく、家族以外のリズとクルスが同席することが気にいらない。妹が不意に帰ってきたことにも疑問がある。姉妹はもともと上手くいっていない、というか、姉は妹の行動に一言何か言いたい鬱屈をためている。アナは「明日ママが死ぬ前に自殺すると警察に通報する。私はまだ心が決まっていないわ。死ぬなんて最悪よ」。母は死に怯えて間違った判断をしているという意見に、医師である父は「それは違う。安楽死を選ぶ人はむしろ正気でウツ状態でもなく、たいてい知的で明快で分析的で抑制されている」と見解を述べる。リリーは確かにそういう女性だ。「年寄りは、人生には意味があって生きる価値があるというフリをしているの」と自己批評する辛口だ。リズはリリーの元カノである。リズとリリーが海辺を散歩しながら話す。リズ「家族にレスビアンがいるなんてオシャレだわ」リリー「私たちも試してみたわ。確か73年か74年」「ひどく酔っ払ってテクがイマイチだった?」「いいえ、あなたはうまかったわ」「アナは傷つきやすい子でしょ」「大丈夫、少し気まぐれなだけ」。このリズの存在が長女ジェニファーの疑惑の核心を作った。翌朝リリーは全員を見送って、ポールが用意した薬剤を服用して死ぬ、ポールは散歩に出かけ、帰宅して妻の死を見届け警察に自殺と通報する、そんな段取りが決まっていた。最後の晩餐はリリーの希望でクリスマスを模することになった。リリーがプレゼントを全員に贈る。形見分けである。「これを外すことはないと思っていたけど」と結婚指輪を抜き、夫にあげる。食卓の華やぎはどこかわざとらしい。リリー「死ぬ日を決めたら死が怖くなくなった。不安はあるわ。でも誰でもいつか死ぬ。私はそれがいつかわかっているだけ。今ここにいて最高の食事とワインでお腹いっぱい。満足だし、幸せよ。誇りに思う2人の娘たち。娘の愛する人たち」。アナが遮った。「どこが誇りなの? 何も知らないくせに」「私は強くて自由な人間に育てたわ」「ママの娘は2人ともぶっ壊れているわ。私にひと月連絡がつかなかったのは自殺未遂で精神病院にいたからよ」。ジェニファー「驚いたわ(みなを見回し)、以前注目されたくて、わざと手首を切った子よ」アナ、姉を無視「強い子に育てたですって? ママの口癖は創造的であれ、自由であれ。ただし大人の邪魔をするな」。リリーは思いがけぬ娘の攻撃に疲れ寝室に引き取った。

 

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