女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

令和4年2月のベストコレクション

2022年2月17日

特集「令和4年2月のベストコレクション」⑦
プロミッシング・ヤング・ウーマン(上)(2021年 社会派映画)

監督 エメラルド・フェネル

出演 キャリー・マリガン

シネマ365日 No.3845

ニーナの事件

ポップな色調と軽快な会話で、重く痛い内容をまとめたエメラルド・フェネル監督(脚本も)。長編第1作と言いますからかなりの凄腕ね。毎週クラブへ行って立てなくなるくらい泥酔したフリをするキャシー(キャリー・マリガン)。「するとあんたみたいな〝いいやつ〟が様子を見にくる」この夜の男は自称小説家。連れ込んだ部屋でキャシーに「俺は完璧主義者だから推敲に推敲を重ねる」とグダグダ御託を並べる。トロンとして聞いていた彼女「帰りたい」「ここにいろよ」にじり寄ってきた男に「帰りたいって言ってンだよ」ガラリ変えた口調に男唖然「酔っていないのか」。女は底光りする目を据え「まだやりたい?」男、蚊のなくような声で「いや、けっこう」。キャシー、シャキッと立ち上がり「次回は気をつけな。それと、あんたの小説、ゴミっぽい」言い捨てて出る。自分の部屋に戻り使い慣れた手帳にその日のメモ、と言っても太い線をぎゅうぎゅう引くだけ。手帳を閉じ壁の写真に声をかける。「おやすみ、ニーナ」▼「プロミッシング・ヤング・ウーマン」(原題ママ)は「未来を約束された若い女性」。キャシーは医大を中退した。将来を嘱望された学生だったが、ある事件が人生を変えた。今日はキャシーの誕生日。母親「あなた、自分がどれだけ異常かわかっている? 30歳になって親と同居、誕生日も忘れる。ケチなコーヒーショップで働き、朝まで帰ってこない。友達も恋人もいない」両親の贈り物はスーツケースだった。「露骨だね」とコーヒーショップの同僚のゲイル。「実家から出て行け、の最高のメタファーだわ。なぜ出て行かないの? 白人女とシェアするとか、変態男と地下室を借りるとか」「あのさ」キャシーが中断する。「彼氏、ヨガ、家、子供、仕事、欲しけりゃ手に入れているわ。でもイヤ。欲しくないの」。たまたま医大の同窓生、ライアンが店に来た。小児外科医である。思い出話をする。「医大の友達はいないのかい?」「いない」「親しかったもう1人の女子がいたね」。キャシー黙殺。「アル・モンロー、覚えているかい?」「…」「ロンドンから帰国してビキニのモデルと結婚する。彼は麻酔医だ。そうそう、マディソン・マクフィは双子を産んだよ」。聞き流していたキャシーは帰宅して、すぐアルとマディソンを検索した▼レストランでキャシーはマディソンを待っている。先に席に着いたキャシーはマディソンにシャンパンを、自分のグラスには色がそっくりなジンジャーエールを注いで待機。卒業以来の再会だ。「あなたの人生は全て成功ね」とキャシーに持ち上げられ気をよくしたマディソンは、ワインをボトルでお代わり。キャシー、頃合いを見計らい「今日は私が大学を辞めた理由を話したくて会ったの。あの事件、覚えている? もし今友だちがあなたの家に来てひどいことが起きたと言ったらなんて言う? 大げさに騒ぐ女だと呆れた顔で無視?」「なぜ私に訊くの。あの事件を信じない人は大勢いた。誰とでも寝る女だったもの。私のせいじゃないわ。泥酔すれば何か起きる。毎日帰れないくらい飲んでいた。怒らないでよ、ここは私が払うわ」うろたえたマディソンは真っ白なテーブルクロスに赤ワインのグラスを倒した。「再会できてよかった。あなたは昔のままね」意味深な挨拶を残し、席を立ったキャシーは出がけに男に合図、部屋のキーと金の入った封筒を渡した。「あの女よ」「いいのか?」「ええ」。翌日マディソンから電話が入った。「すごく酔って記憶がないの。ホテルの部屋で目が覚めたの。何かあったみたい」。キャシー、聞き流し電話を切る。手帳の次のページには「ウォーカー」と書いてあった▼キャシーは医大でウォーカー学部長に面会している。「復学したいとか?」彼女は穏やかに尋ねた。「私はニーナの事件で中退しました。お忘れですか。アル・モンローは?」「覚えています。帰国してうちで講演したわ。お友だち?」「いいえ。彼への告発は覚えています?」学部長に影が走る。「いいえ」「あなたがお忘れのニーナを部屋に連れ込み、何度もレイプしました。友人たちの前で。酔った彼女は状態がわからず、翌日は手の痕のアザだらけ。彼の仲間は笑いながら見ていました」「告発はしたのですか。話した相手は?」「あなた。でも覚えていないのね。あなたは証拠がないと言った。両者の言い分が食い違いすぎるとも」「つらいわね。でも彼女は酔っていた」「酔っていたのが悪い?」「私にどうしろと。告発のたび、前途有為な青年の人生を潰せと?」「男の言い分を信じるのですか」「疑わしきは罰せずだから」「あなたは正しい。疑わしければ男を罰しない。だから3時間前、あなたの娘を大学の前で拾い男性に紹介しました。部屋にはウオツカがあった。綺麗な女の子にはよくしてくれるはず。彼女は興奮していたし」「何の真似なの、サイコ女! 娘の居場所を教えて」「自分の愛する人間だと同じ状況でも見方が変わる。でも疑わしい男は罰しないのでしょ」学部長は半狂乱になり「あなたが正しい。私が間違っていた。だから娘の居場所を教えて!」「彼女、バカよね。女にオツムは不要、役に立たないから」。言い捨て退室した。

 

あなたにオススメ