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特集「神も仏もない映画」

2022年2月27日

特集「神も仏もない映画6」⑧
ドリームランド(2021年 恋愛映画)

監督 マイルズ・ジョリス=ペイラフィット
出演 マーゴット・ロビー/フィン・コール

シネマ365日 No.3855

恋の果て

マーゴット・ロビーの最高傑作らしいけど、そうかなあ。ストーリーは前半で読めてしまうし、主人公ユージン(フィン・コール)が、いくら17歳の世間知らずな田舎の青年だとしても、彼の行動はビックリものだしね。農業を営むユージンの農場が毎年数回も襲われる砂嵐でメチャクチャにやられ、荒地を捨てて陽光に満ちた明るい大きな海のある国へ行こう、とドリームランドを夢見る。それはいいけど、彼、あんまり働き者じゃないのね。毎朝義父に尻を叩かれて起き、銀行強盗の指名手配犯の女アリソン(マーゴット・ロビー)を見つけたら賞金1万ドルだ、よし、見つけに行こうと友達と捜索に出る。家業に精出すわけじゃないのよ。友達はカリフォルニアで出直すと自分なりの人生設計を考えているのに、ユージンの頭の中は冒険小説とアウトローのヒーローでいっぱいだ。根拠のない強すぎる憧れが危険なものであると、この年齢で判断がつかないのは無理ないとしよう。しかしアリソンに出会ったユージンはたちまち成熟した危険な女にクラクラ。メキシコへの逃避行を共にする▼アリソンはいくら何でもこんなコドモを巻き添えにするのは不憫だ、深入りしないうちに家にお帰りと促すのに、男は受け付けない。「君を1人でメキシコには行かせないと決めた!」。誰も頼んでいないでしょう。アリソンも情が移り、お金がなくなると「ちょっと一仕事」と銀行に押し込む。ユージンが誤って警備員を射殺する。恐ろしいことになった。ユージンがびびってしまい、こうなったのはアリソンと会ったからだと責める。アリソンは過失だったかもしれないが人も殺し、強盗仲間だった恋人にも死に別れ、捕まれば吊るし首だ。トラブルを人のせいにしている場合ではない。メキシコ行きも「車を1台調達して。2万ドル払うわ、それでどう」とビジネスライクだった。美人で強い悪夢の天使に、17歳は虜になったのだ。よくあることだから、仕方ないとしよう。この映画は仕方ないことばかりを描き出したいみたいだ。本当にそうか▼こう書くと愛もヘチマもロマンスもなくなるとわかってはいるが、ユージンが朝から晩までスキやクワをふるい、誰よりも早く起き耕地に出て、事実上一家の主人として働いていれば、17歳だろうと15歳だろうと、指名手配女が納屋に潜んでいればさっさと通報して1万ドルもらっただろう。アリソンは魅力的ですよ。ユージンの幼さをいたわるやさしさがある。でもユージンと彼女では、それこそ住む世界が違うのだ。息子の後を追跡してきた義父(保安官代理)は、銃口を向けた部下に「撃つな」と止め、アリソンだけを射殺する。ユージンは義父の左脚を撃ち逃走する。以後「兄には会ったことがない」と妹。彼女は兄を説得できるのは自分だけだと、父親の車に隠れて便乗し追い詰められた兄に「逃げて」と叫ぶのだ。10歳くらいの女の子が。ユージンは蒸発した実の父がたった一枚送ってくれた絵葉書に「ここはいいところだ」と書いてあった海の絵が頭を離れず、夢の土地があるのだと信じる。その結果、義父になつかなくなってしまったのだけど、義父は生真面目ないい父親よ。男らしい男とは(女もだけど)、目の前の状況に忍耐と共に最善を尽くす人たちよ。アリソンだって、ある意味では彼女なりの「前向き」な生き方だったし(罪状はさておき)。マーゴット・ロビーがプロデュースしたそう。彼女、波に乗っているときだからこんな凡庸な作品でも「最高」と言われるのね。本物の「最高」を待ちたいわ。

 

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