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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2022年3月3日

特集「映画に見るゲイ15」340
ゴッズ・オウン・カントリー(下)(2019年 ゲイ映画)

監督 フランシス・リー
出演 ジョシュ・オコーナー/アレック・セカレイア

シネマ365日 No.3859

幸せになれる、かもしれない

映画に見るゲイ15

ゲオルゲの職場であるブロッケン・ミューア農場に来たジョニー。「何の用だ」つっけんどんに訊くゲオルゲに「会いたかった。会って話したら何かが変わるかと思って来るだけ来た」「それだけ? 他に話は? ないなら俺は仕事中だ。行かないと」「努力しているんだ。もどってくれ。離れたくない」(泣く)。「変わりたい。一緒にいたい。話はそれだけだ」「ヘンタイだな」「お前も」「ホモ野郎」「うるせえ」。これで仲直りだ。ジョニーが追ってきたと、わかった段階でゲオルゲは許していましたけどね。夜行バスでヨークシャーに帰る2人。めでたくハッピーエンドです。小津安二郎のような毒のある監督なら、将来を暗示する不安要素を無言のエンドシーンで示しそうだけど、本作は刈り入れ時の農家の、家族揃った共同作業がホームビデオみたいに流れて終わる。真から「めでたし」よ▼ヨーロッパが抱える難民問題や、介護や、時代から取り残されつつある牧場経営など、重い社会背景がバックにあります。ありますが「ブロークバック・マウンテン」の感情を絞り上げるような切なさと違って、主人公たちに明るい未来のあることがほのぼのとしたファンタジーを与える。良くも悪しくもそれがフランシス・リー監督の世界観でしょう。本作のあと作られた「アンモナイトの目覚め」でも、ヒロインたちは絶望と別離の一歩手前で「幸福になるかもしれない」かすかな予感を残しました。どんな作風に変化していくかは知りませんが、概ねリー監督の基本「幸せになれるかもしれない」未来志向は変わらないように思えます。分断を分断のままにしない、人間を追い詰めない、弱点を弱点として認める、排斥より融合を求める。そんな観点はダルデンヌ兄弟と一脈通じるものがあり、テロだ、戦争だ、差別だ、リンチだという暴力的な社会で一隅を照らす映画となるに違いない。そう考えるといけ好かないジョニーには、それなりの作劇上の役割があったと納得できます。ゲオルゲ役のアレック・セカレイアと祖母役のジェマ・ジョーンズは次作「アンモナイトの…」の準主役でした。今回もリー監督と息のあった共作です▼家畜たちの世話や牧場の普段の営み、ヨークシャーの厳しい自然や風景の捉え方に説得力があるのは、リー監督自身がヨークシャーの農家出身で、もし自分が映画に進まず、農家にとどまっていたら、という発想が本作のベースになったそうです。収穫の祝祭のようなエンディングは故郷へのリスペクトかもしれません。

 

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