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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2022年3月4日

特集「映画に見るゲイ15」341
スーパーノヴァ(上)(2021年 ゲイ映画)

監督 ハリー・マックイーン
出演 コリン・ファース/スタンリー・トゥッチ

シネマ365日 No.3860

自然でフツーの同性愛

映画に見るゲイ15

サム(コリン・ファース)とタスカー(スタンリー・トゥッチ)は中年のカップル。タスカーが若年性認知症を発症して2年、病気が進行しないうちに思い出の地を訪ねようと、キャンピングカーでイングランド北部湖水地方へ旅に出た。サムはピアニスト、タスカーは作家だ。タスカーの看病でサムは半引退状態だ。ハリー・マックイーン監督が本作を撮った意図は「進歩的で先進的な同性カップルであること。ゲイによる差別とか、同性愛者であることの疎外感とか、これまでゲイについて回った性的志向は物語に無関係だ。ごく自然で普通のものにしたかった。そういう映画がまだ足りていない」。これから同様の捉え方は増えていくのではないでしょうか。「アンモナイトの目覚め」でも、ヒロインたちの描き方は綺麗さっぱり、社会的な抑圧や悩みから解放され、自分達の愛に生きるという主張が明瞭でしたから▼「いいなあ」と思うシーンがいくつもありました。オープニングのワンシーンは一見ものです。水彩画のような静謐な空気の中で2人の男性が全裸で眠っている。それだけなのですが、彼らの未来にこの静けさは保たれるのか? と言うよりこの静けさと美しさを、いかに保つかが2人の命題になります。2人は20年の付き合いです。20年たっても手をつなぎ、頬寄せて眠る。これも「いいなあ」と思ったひとつ。でも過酷な現実はひたひたと忍び寄ってくる。キャンピングカーの中でサムが料理を作っている。「料理はいつも君任せだな。手伝おう」とスタンリー。「いいから座っていろ」。「願いがひとつ叶うなら何を願う」「この休暇が終わらないこと。君は?」「病気になる前の自分」。彼らはサムの実家に到着する。姉のリリーが弟に「今後のことを話し合わない? 人の手を借りることも」「彼が受け入れない。人の世話になるまいと努力している」そう言ったあとで「自信がないよ、姉さん」とポロリ、弱音を吐く▼日常のスタンリーの動作にも変化が生じてきた。シャツのボタンを止めようとするがうまくはまらない。「僕がやろう」サムが止めてやる。スタンリーは逆らわない。歓迎夕食会に古い友人たちが出席した。スタンリーが挨拶した。「ここはサムの実家だが僕にとっても故郷だ。私は記憶と能力をゆっくりと失いつつある。まあ、いいさ。もうすこし経つと自分が何者かも忘れる。物事に無関心になる。だがその時までに共通の思い出が大きな助けになってくれるだろう。皆が揃い、私がこの場にいるのはいま隣に座っている男のおかげだ。私にとって彼は最高の贈り物。私の恩人かつ大親友で最愛のサムに感謝」。同席者たちは恬淡として聞き、スタンリーの執筆は進んでいるかとか、聞きようによっては辛いことを聞くがスタンリーは「まあまあだ」とか言ってはぐらかす。実際は手にペンを持ち書こうとしても言葉が出てこないのだ。「失うものが悲しいなら、それは良きものだったのさ」とスタンリーは軽く言う。「あなたは弟が愛した人よ」と姉が言えば「もう違う。外見は同じだが」。愛の先には何があるのだろう。サムはある時タスカーの荷物にペントバルビタール経口液剤を見つけた。黙っていた。さりげなく「何か書いたらどうだ」と話を向ける。「録音しようか」。彼らはテープに時折の所感を録音していた。「今はやりたくない」と拒んだタスカーだったが、かまわずサムはスイッチを入れる。聞こえてきたのはタスカーが吹き込んだ遺言だった。「私はタスカー・マリナー。これは私の選択だ。10月25日。私はここで命を絶つ。自分の意思で選んだ。サムや他の誰かの重荷になることは望まない。サム。愛している。ありったけの想いを君に」。

 

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