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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2022年3月8日

特集「映画に見るゲイ15」345
ダイ・ビューティフル(2016年 ゲイ映画)

監督 ジュン・ロブレス・ラナ
出演 パオロ・バリェステロス/クリスティアン・バブレス

シネマ365日 No.3864

最高の可能性に

フィリピンの映画です。パトリック(パオロ・バリェステロス)は同性愛を「一族の恥」と毛嫌いする厳格な父に勘当され、友だちのバーブス(クリスティアン・バブレス)の家に転がり込む。彼は母親と二人暮しだ。家は出た、学校はやめた、どんなことでもやるというパトリックにミスコン出場を進める。トリシャと名乗った。新しい名前と新しい人生が開けると思えたが、ミスコンの重労働なこと。フィリピンでは各地でミスコンが開催され、ツアーの巡業のように会場を回るのだ。晴れの大舞台「ミス・ゲイ・フィリピーナ」で優勝したトリシャは、表彰台でクモ膜下出血。帰らぬ人となった。バーブスは親友との約束を守り通夜の1週間、毎夜彼が選んだ女優の顔コピーをメークで施す。アンジェリーナ・ジョリー、ビヨンセ、ケイティ・ベリー、ジュリア・ロバーツ、ガガ…▼トリシャは身寄りのない女の子、シャーリー・メイを養子とした。彼女は学校で「お前のママはオカマだ」といじめられる。「あんたを産んだのは別のママよ。私はまだ本当の女性じゃないけど、あんたのママよ。子供を産んだからってママとは限らないのよ」。トリシャは娘を抱いてやさしく言った。トリシャにノンケの友だちができた。ジェシーだ。夕食の用意を万端すませ彼を家に招いたがこない。束の間の夢だったと諦めた。ジェシーは入院していた。白血病だった。妻のダイアナが「あなたと話したがっている」とトリシャに伝える。病室で会ったジェシーは明らかに死が近かった。思いがけないことを彼は告白した。「僕に見覚えはないか。君にしたことに僕は苦しんだ」。ジェシーはトリシャを集団レイプした不良グループの1人だった。「有頂天にならせておいて、ただのクズ野郎だったのね。どっちが悲劇かしら。レイプされたことと騙されたことと」「愛している」「本当かしら」。夢は覚めた▼父親は息子の遺体を引き取って帰った。彼が手術で乳房を作ったことが勘弁ならぬ。元の体に戻せ、と娘(トリシャの姉)に命じるが、娘は密かにバーブスに電話し、棺をゲイたちの元に送り返した。通夜の最後の夜、集まった参会者にバーブスが挨拶した。「親友としてトリシャの遺言を守り、みなさんの記憶に残るメークを考えてきました。あなたたちの母として娘として、恋人として妻として、何よりもミスコンの女王として、みなさんの知る最も美しい女性、トリシャその人を今夜はみてください」▼本作はニューハーフが殺害された事実を基にしている。トリシャもバーブスもゲイ友だち同士のあけすけな会話は屈託ないが、彼らの周囲は残酷な差別が取り囲んでいる。ミスコンの晴れやかなステージに立つことが、いつしかトリシャの生きがいとなった。しかしいつまでも華やかなミスコン女王では生きられない。バーブスは言ったものだ。「ゲイは養子が必要よ。老後の面倒を見てもらうために」。孔雀のような彩りの中にいながら、旅から旅、女王を夢見て地方のステージに上がる生活は虚しくないか? そう思うのはノーマルな世界にいるマジョリティの、ある種の差別かもしれない。生きることが選択の連続であるなら、トリシャは自分にとって最高の可能性を選択し、挑み続けたことになる。虚しいの、虚しくないのは大きなお世話だ。いつもトリシャと二個一、ツアーにもステージにも影が形に沿うごとく一緒にいたバーブス。こよなき友よ。一世一代のメーク術で、人生の総仕上げをやってのけたバーブスが、なんていいやつだ。

 

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