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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2022年3月9日

特集「映画に見るゲイ15」346
さらば、わが愛/覇王別姫(上)(1994年 ゲイ映画)

監督 チェン・カイコー
出演 レスリー・チャン/チャン・フォンイー/コン・リー

シネマ365日 No.3865

アーティストの試練

中国の近代史50年に及ぶ大作。主人公、蝶衣(レスリー・チャン)の一生が悲劇的だ。遊女である母親から半ば捨てられるように京劇の一座に置いて行かれる。座長は「この手で役者は無理だ」(指が6本あった)と断るが、母親はナタで息子の小指を叩き切って押し付けて行った。一座には大勢の少年が日々厳しい稽古を積んでいる。「淫売の子」とイジメを受けるが、庇ってくれたのが兄弟子の石頭(シートウ=成長し段小楼)だ。2人は猛練習に耐え、京劇界のトップスターとなる。最大の人気の演目は「覇王別姫」だ。楚と漢の争いが背景にある。楚王は無敵の英雄だったが運命が味方しなかった。劉邦の戦略「四面楚歌」によって敗北し、最後に残ったのは愛姫と1頭の馬。姫は酒を王に注ぎ最後の舞を舞って自刃する。覇王に小楼、別姫に蝶衣が扮した。豪壮な小楼の覇王と、可憐妖艶な蝶衣の別姫は、あでやかな衣装と透き通った歌と演技、見事なコンビネーションで北京中の話題をさらった▼蝶衣が愛するのは舞台と小楼だった。京劇一筋に打ち込む蝶衣と違い、小楼は舞台を降りれば普通の生活を楽しみたい男だった。彼はナンバー1の遊女、菊仙(コン・リー)と結婚の約束をする。蝶衣は嫉妬まみれになり、彼に色目を使う富豪の老人の贔屓役者となる。1937年盧溝橋事件前夜。京劇の元締め袁四爺(イェンスーイエ)が蝶衣に注目し晩餐に招くが、小楼は「女と約束がある」とあっさり断り菊仙の妓楼に行く。女に夢中の小楼に「僕らがなぜこれほど成功したか、師匠の言葉通り生涯共に芝居すると誓ったからだ。死ぬまで一緒にいよう。一年、一月、一日、一秒も離れていたくない」小楼は落ち着いていう「舞台を命と思うのはいいが、俺は普通の暮らしがいい」。蝶衣は菊仙が嫌いだ。自分を捨てた母と同じ遊女、小楼を奪う女だったからだ。日中戦争は激化。小楼は日本兵と喧嘩になり逮捕された。菊仙は小楼と別れることを条件に、蝶衣が気に入っている日本軍将校、青木の宴席に出るよう懇願、引き受けた蝶衣は歌と踊りを披露し、小楼は釈放となった。小楼は日本軍に取り入った蝶衣を許さず、菊仙と結婚しコンビを解消した▼2人ともうまく行かなかった。小楼はコオロギ賭博に、蝶衣はアヘンに耽溺した。役者として再起を決意した小楼は蝶衣と和解し、蝶衣は禁断症状に耐えてアヘンを克服した。師匠が他界し京劇一座は解散となった。捨て子のため帰る家のない少年、小四(シャオスー)を超衣は弟子にした。日中戦争は日本の敗戦に終わり、北京は中華民国軍の支配下となった。小楼は観劇する兵士のライトの点滅に腹をたて「日本軍でもしなかった」と注意したら乱闘となり、蝶衣は逮捕。身籠もっていた菊仙は流産する。菊仙は夫と蝶衣が一緒にいることが不安だ。「蝶衣を自由の身にしたら縁を切って」と夫に頼む。蝶衣の裁判となった。菊仙が袁四爺に手を回し、日本軍に拷問されて踊ったといえと答弁を指示していたのに、蝶衣は無視した。「日本軍は私に指1本触れませんでした。もし青木将校が存命なら、京劇を日本に持って行ったでしょう」。いちばん京劇を理解してくれたのは日本人だったと言ったのと同じだ。事態は紛糾し審理は保留、蝶衣は釈放された▼次にきた大波は文化大革命だ。1949年人民解放軍が北京へ。文化人の代表格だった袁四爺は反革命分子として処刑、京劇の世界にも革命勢力が吹き荒れた。「京劇には独特の美がある」と主張する蝶衣に、弟子である小四は「昔の英雄や美女が登場するのが京劇か。勤労者が主人公ではダメなのか。あなたの京劇は古い」と糾弾した。「口が達者なだけでは役者になれないぞ。稽古せねばお前は永久に三流だ」「あんたは時代がわかっていない。新しい社会は旧体制とは違う、見ていろ、今に主役になってやる」言い捨てて蝶衣の下を去った。一命を以て打ち込んできた自分の京劇が否定されようとしている。時代と社会に挑戦し、常に戦う運命にある、アーティストの試練が蝶衣を襲いました。

 

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