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特集「ザ・クラシックス」

2022年3月22日

特集「ザ・クラシックス10」④
殺人者はバッヂをつけていた(1954年 犯罪映画)

出演 キム・ノヴァク/フレッド・マクマレイ

シネマ365日 No.3878

金なんて要らなかったな

特集「ザ・クラシックス10」

キム・ノヴァクの実質デビュー作。21歳でした。銀行ギャングの主犯、ハリーを追っている刑事ポール(フレッド・マクマレイ)は、彼の情婦、ローナ(キム・ノヴァク)を一目見て惹かれる。ハリーは必ず、女のところに盗んだ金21万ドルを持って現れると捜査陣は確信、3人の刑事が交代でマンションを見張る。盗聴器もつけた。ローナの挙動は手に取るようにわかった。張り込み中、ポールは同僚のニックに言う。「貧乏人は女に恵まれない。俺の両親はいつも金のことで喧嘩していた。幼い頃の夢は大金持ちになることだった」。確かにローナはファム・ファタールだ。ポールはハリーを殺して金を奪い一緒に逃げようとローナに持ちかけるが、どこかで「金があれば女に恵まれる」と思っていたことが道を誤らせた▼「ハリーが初めて贅沢させてくれた」というローナに刑事は「汚い金だぞ」。「汚いのは金でなく人よ」とローナ。彼女が男と離れなかったのは「車や服を買ってくれ、家賃も払ってくれた」からだ。物憂げにそういうローナに恋だ、愛だという口吻はない。だからあっさり刑事であるポールに逃げようと言ったのか、それとも初めて恋しい男だと思えたのか、キム・ノヴァクがあまり無表情なので真意のほどがわかりにくい、そんな女に思わせる。あっという間にのめりこんだのは男の方だ。女と逃げるために綱渡りのような工作をする。マンションの住人とのすれ違いや、張り込んでいる同僚との間一髪の交代のタイミングや、「大時計」と同じハラハラ、ヒヤヒヤ感がある。大金を奪い正当防衛を画策するため実直な同僚を巻き込み、あまつさえ射殺してしまう。引き返せない。警察の上司がポールを疑い、証拠を固めた。女は「お金は諦めて逃げましょう」というのに男は金に固執して女を先に逃し、車にある金を取りに行く。ポールは昇進も有望視される前途有望の刑事だった。上司に撃たれた彼は路上に倒れる。ローナが走り寄りゆっくり抱きかかえる。「逃げなかったのか」と男は女の愛に気づく。「金なんて要らなかったな」そう呟いて死ぬ。確かにローナは男の運命を狂わせたファム・ファタールには違いない。しかしどこか…少なくともキム・ノヴァクのローナは攻撃的な色恋のエロチシズムより、感情の沈潜した女であることを感じさせる。美しい容貌ではあるが、エリザベス・テイラーのようなキンキラキンの美貌ではなく、カトリーヌ・ドヌーブのような美神と崇められるそれでもない。ふしだらな情欲に溺れるでもなく、男を紙くずのように捨てる非情な女でもなく、ただ生活に膿み、先行きに希望もなく、初めて味わった贅沢だけが女を男に結びつけている。キムが21歳で、儚いのかわびしいのか、純情なのか、擦れているのか、一言で言えない女を演じられたのは驚きだ。感情のこもらないセリフも似合っていた。

 

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