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特集「ザ・クラシックス」

2022年3月30日

特集「ザ・クラシックス10」⑪
フレンチ・カンカン(上)(1955年 事実に基づく映画)

監督 ジャン・ルノワール
出演 ジャン・ギャバン/フランソワーズ・アルヌール

シネマ365日 No.3886

劇場の名は「赤い風車」

特集「ザ・クラシックス10」

1880年代パリ、モンマルトル。「ムーラン・ルージュ(赤い風車)」開業前夜の物語です。上流階級向けのダンスクラブのオーナー、ダングラール(ジャン・ギャバン)は上品な社交ダンスより、快活でダイナミックなカンカンが好きだ。でも今は時代遅れとなり、かつてのカンカンの女王は路上で物乞いするご時世だ。カンカン生き残り、ギポールは細々とダンス教室を開いて生徒を教えている。そこへダングラールが若い女性ニニ(フランソワーズ・アルヌール)を連れてきてカンカンを教えてやってくれと頼む。彼は自分の店を売って場末のモンマルトルのダンスホール「白い女王」を買い取った。「白い女王」で恋人と踊っている洗濯女のニニを見かけたダングラールは、妖精のように踊る彼女に魅せられ、カンカンをメーンにしたキャバレー「赤い風車」をオープンさせる計画だった。ダンサー募集で選抜された踊り子たちのレッスンが始まった。ギポール先生が厳しいの、なんの。カンカンは激しく速く肉体を駆使する踊りだ。高く上げた脚、宙に跳んで180度開脚したままの着地。壁に片足を真っ直ぐ垂直に密着させ両脚を伸ばす。ニニは嬉々としてレッスンに励んだ▼「赤い風車」建設途中に、ダングラールのケガや入院、差押、ニニと舞姫ローラの敵対。資金不足で建設は頓挫した。助け舟を出したのがニニを恋する某国の王子にしてマホメットの子孫アレクサンドル殿下だ。「僕の国に羊とタバコとバラの国です。お金が必要なら出す」。差押物件として売りに出たムーラン・ルージュを買い取った。どうしても振り向いてくれないニニに絶望した王子は拳銃自殺を試みた(未遂だったが)。帰国する前、王子はニニと会い「パリの思い出を作りたい。年をとったときパリの思い出を話せるように」と頼む。ニニはエッフェル塔や凱旋門や観光名所でなく、住み慣れた庶民の町モンマルトルを一緒に歩く。街角のカフェ、古びた壁、石の階段、階段を登ればパリの街が見下ろす丘。ユトリロの絵がそのまま映画になったようだ。別れるとき王子は「これを」封書を差し出した。「ムーラン・ルージュの権利書です。ダングラールの名義になっています」。ジャン・ルノワール監督の、こういう人情のツボの押さえ方がたまらなく心憎い。「十字路の夜」でも「ランジェ氏の犯罪」あるいは「獣人」でも、どこかに救いを描くのが彼の映画だった。紆余曲折を経て「ムーラン・ルージュ」オープンの夜が来た。夜空に浮き上がる赤い風車。詰めかける人々。老いも若きも、セレブも庶民も、かつてパリの夜を風靡したカンカンの復活を一目見ようと押しかけた。

 

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