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特集「最高のビッチ」

2022年4月10日

特集「最高のビッチ15」⑩シェリー・ウィンタース1
ヘレンに何が起こったのか?(上)(1971年 劇場未公開)

監督 カーティス・ハリントン
出演 シェリー・ウィンタース/デビー・レイノルズ

シネマ365日 No.3897

息子に負い目のある母

シェリー・ウィンタースは2006年85歳で没した。50年の女優生活で70本か、80本近い作品に出演し2度のアカデミー助演女優賞を受賞した。そのひとつが「ポセイドン・アドベンチャー」だ。船に穴が空いて浸水し、逆さまになった客船でジーン・ハックマンの牧師を救うため、船底の深い水に飛び込む30年前の水泳選手。救出した直後心臓発作で帰らぬ人となる女性だ。あざやかなダイブも泳ぎも見事なフォームだった。52歳だった。彼女の50代は代表作の連続である。「血まみれギャングママ」。30年代のアメリカを荒らし回った実在の強盗一家のバイオレンス映画。母親のケイト・パーカーを演じたのがシェリーで、夫と別れ4人の息子を連れて旅に。あちこちの町を巡り、物見遊山のように銀行強盗を繰り返す折り紙付きのビッチだ。その翌年が本作、そして「ポセイドン…」と続く▼社会派の「シリアル…」大作の「ポセイドン…」に挟まれ、地味で目立たないうえタイトルからして「何がジェーンに起こったか」のパクリみたいだ。「ジェーン」のベティ・デイビスは攻撃的で狡賢く、あっけらかんと裏をかく陽のビッチがよく似合った。本作のヒロイン、ヘレンはどうか。もうひとりのヒロイン、アデル(デビー・レイノルズ)の影みたいに大人しく、信仰心厚く、刑務所で終身刑を受けた息子を常に心配する。髪をプラチナ・ブロンドに染め、ダンス教室を主催するアデルの腰は引き締まり、身ごなしは軽く、ファッションは垢抜けし、いつも男の注目を集める。ヘレンは太って野暮くさい、どう見ても田舎のおばさんで、ウサギを数羽、ケージに飼いこよなく可愛がる。彼女の仕事は教室のピアノ伴奏だ。彼女らの息子はエリー・バーナーという女性を惨殺した罪で刑務所にいる。息子の母親であるヘレンとアデルは社会から糾弾され、引っ越してきた。ハリウッドでは子供を映画に出すために、狂奔する親がいくらでもいるからだ▼母親たちは共に息子に負い目があった。アデルはシングルマザーだった。「私たちが食べていけるように忙しく踊っていた」が、ヘレンに言わせると小さな息子を無視していた。夫と農場を営んでいたヘレンは、不注意によるトラクターの事故で夫が轢死、それを見ていた4歳の息子は母親が父親を死なせたと思った。ふたりは悪夢を振り払うように、人生をリセットするつもりだった。ダンス教室の生徒の1人、パーマーという子のセレブの父親がリンカーン(リンク)だった。彼はアデルにデートを申し込む。「素晴らしい理想的な人」とウキウキするアデルに「彼は信用できるの? ウェス(息子)のことは話した?」とヘレン。傷口にグサッとくる質問にアデルは辟易する。教室の発表会の日がきた。着飾った子供たちが演目を競い、親たちは我が娘の出来栄えに目を細める。その時、舞台裏から絶叫が聞こえた。ヘレンが扇風機の羽が回るのを見て、夫を轢き殺したトラクターの鋤の刃を連想し、発作を起こして叫び続けた。客席はパニックになる。発表会はぶち壊し。リンクの家で怒りをぶちまけるアデルに、「今朝手紙が届いたよ」とリックが差し出したのは、終身刑の判決を聞いて裁判所を出るアデルとヘレンの写真の載った新聞だ。「ヘレンの息子レニーは首謀者だと認めたとある。ウェスというのは君の息子だろ」。「何度も話そうと思ったけど怖かったの」とアデルは萎れる。夜、教室のポスターのアデルの写真の喉にナイフが刺さっていた。

 

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