女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「最高のビッチ」

2022年4月12日

特集「最高のビッチ15」⑫ペギー・カミンズ
拳銃魔 (1952年 犯罪映画)

監督 ジョセフ・H・ルイス
出演 ペギー・カミンズ/ジョン・ドール

シネマ365日 No.3899

私は現実にあなたのものよ

最高のビッチ」シリーズで何人ものビッチに登場してもらったが、彼女らにはなんとなく可愛げがあったものだ。少なくともそう感じられる悪女に魅力を覚えた。本作はしかし、心底憎らしくえげつない女性である。バート(ジョン・ドール)とロニー(ペギー・カミンズ)はどちらも射撃の名手。バートは生き物を殺せないやさしい心の持ち主だがロニーは違う。一目惚れしたバートはロニーと結婚するが、ロニーの金遣いが荒くたちまちその日暮らしに陥る。貧しくても堅実に生きようとするバートに「あなた、いつ人生を楽しむの? 安月給で汲々とするのは私には無理ね。はした金じゃ満足して暮らせない」そこで銀行強盗を持ちかける。「生活の心配なんてイヤ、男はタフでガッツがあってなんでも笑顔でこなさないと。たとえ社会に逆らってでも私を満足させて」。とんでもない女なのにバートは離れられない。拳銃と弾丸のように「俺たちは対なのだ」から、この2人が助からない結末は序盤から目に見えているが、悲劇性が感傷なく、スピーディーに処理されていく手際のよさにはまってしまう▼強盗を繰り返すうちに優柔不断だったバートが襲撃の段取り、逃走経路の確定に主導権を握る。ロニーは、ここが彼女の彼女たる所以なのだが、拳銃で脅しはしても引き金を引かないバートに「撃って、殺すのよ」と何度叫ぶのを聞かされることか。男女の強盗は写真入りでデカデカ報道されるが、巧みな変装と演技ですり抜け、いざとなれば検問を強行突破。「いつか捕まる」とバートが言えば「愛しているわ」で男の不安をかき消そうとする。州内に張り巡らされた非常線をかいくぐり、バートは姉ルビーの家にきた。彼にとっては母親代わりの姉だ。小さな子が3人、夫は出張中だ。家庭的なルビーと息も肌も合わないロニーは、末息子を人質に逃げれば「警察も撃てない」。「他人の犠牲の上に成り立つ己が幸福」が彼女の発想の源である。幼なじみの親友デイヴとクライドがバートを説得にきた。1人は新聞記者、ひとりは保安官になっている。「自首してくれ。俺たちに追跡や射殺をさせないでくれ」無駄だった▼マデラ国立公園に逃げ込んで山に逃れる。池を渡り、川を越え、飲まず食わずのフラフラで野宿だ。「バート、どうなるの? 怖いわ」「今は休むのだ。他にできることはない」女は男の横顔を見つめ「こんなに近くにいられて幸せよ。今度こそ終わりかしら」「どうなろうと君とのことは後悔しない」。なんというバートの純愛。声がした。「クライドだ。デイヴと迎えに来た。銃で囲まれている。もう逃げられん」「デイヴだ。そっちへいく。君は人殺しじゃないだろ」。友情ある説得に女はこう報いる。「一歩でも近づいたら殺すわ!」。銃をあげたロニーを撃ったのはバートだ。バートもまたロニーに撃たれる。山中に霧が立ち込めてきた…。二言目には「撃て」の、「殺せ」のという女との逃避行に男はこう言う「訳がわからないほど目まぐるしくて、自分が自分でない気がする」「どんなときに?」「夜たまに目覚めたときだ。全てが現実じゃないように思える」「今度そうなったら隣に寝ている私を見て。私は現実にあなたのものよ」「でも君以外は全て悪夢だ」。彼らの道行は普通なら「君以外は全て現実で君だけが悪夢だ」でしょ。バートの感覚が、既に非日常の領域に横すべりした愛の中にいることを教える、忘れ難いシーンでした。

 

あなたにオススメ