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令和4年4月のベストコレクション

2022年4月24日

特集「令和4年4月のベストコレクション」⑦
Summer of 85(上)(2021年 恋愛映画)

監督 フランソワ・オゾン
出演 フェリックス・ルフェーブル/バンジャマン・ボワザン/バレリア・ブルーニ・テデスキ

シネマ365日 No.3911

僕の墓の上で踊れ

16歳と18歳の美しい青年2人の6週間の恋と破局です。天候の急変で転覆したヨットからアレックス(フェリックス・ルフェーブル)を救ったのがダヴィド(バンジャマン・ボワゾン)。アレックスは父親が造船所で働く家の息子16歳。進路を決めかねている、よくある〝自分探し中〟。ダヴィドは地元の船具店の息子18歳。お互い一目で心臓を射抜かれた。煌めく夏の日を過ごす。ダヴィドの母ゴーマン夫人(バレリア・ブルーニ・テデスキ)は夫を亡くしたばかりだ。一人息子が胡散臭い友人とばかりつるむのに頭を悩ませていたが、連れてきたアレックスは見るからに謹厳実直な両親に育てられたとわかる真面目な子。夫人はすっかりアレックスが気に入り「食べてしまいたい、私のウサギちゃん」。堅苦しいアレックスに比べ、ダヴィッドの捌けた物腰は母親似であろう。夜のクラブ、夕陽の海辺、夏の陽光の下を走るバイクの二人乗り。アレックスはうっとりとダヴィッドの背中に頬を寄せ、腰を抱き締める▼彼らの幸福はあっけなく終わる。21歳のイギリス人女性ケイトが出現し、ダヴィドがケイトと寝る。アレックスは責める。ダヴィドはのらりくらり、言い訳するがアレックスの追及はやまない。「僕を古い靴下みたいに扱ったな。目の前でケイトを口説いた。理由を言え」「知らない方がいいこともある。言ってしまうと取り返しがつかない。すぐ落ち着くさ。仲直りしよう」「何が原因だ? 誰が原因だ」「原因は君だ」「僕が? 僕といて楽しかっただろ」「楽しかったけど、今は違う」「早く言ってくれれば僕も考えたのに」「そういう問題じゃない。君といるのに飽きたのだ。楽しかったけど僕は変化が欲しい。いろんな相手と遊びたい。わかるか。ひとりじゃ足りないのだ。僕だって一瞬で君と恋に落ちた。僕と同類で、いろんなことをして楽しみたいだけのタイプかと。でも違った。君の望みは僕を独占することだ。無理だよ。悪いな。君は重すぎる」グワ〜ン▼アレックスはダヴィドをこう思っていたのに。「どんなに愛しても足りなくて、ほんの一瞬も離れたくなかった。彼と2人でいる時も満たされなかった。見つめて触れて、触れられたかった」。愛に対する痛いまでに異なるヴィジョン。アレックスはショックと興奮で店の棚を引き倒し、商品をぶちまけ、自転車に飛び乗って走り去る。バイクで後を追ったダヴィドは衝突事故で死ぬ。店で息子からケンカの理由を聞いていた母親は、死なせたのはアレックスだと恨み、葬儀にも参列させない。ユダヤ教では色々な儀式があり、墓を建てるのは死後1年近く後になるそう。アレックスはダヴィドと約束があった。ラブラブの時だ。「どっちかが先に死んだら、残った方は死んだ方の墓の上で踊る。誓えよ」奇妙な提案に尻込みしたが、身も心も捧げたダヴィドに逆らえなかった。でも墓はない。どうする。本作の冒頭は、フランソワ・オゾン監督のほとんどの作品に通底する「ミステリー」ふうで始まります。舞台は彼が大好きな夏の海。本音を白状すると「幻想の貴公子」オゾンの作品にしてはやや底が浅いと思うのですが、それを補ってあまりあるのが映像と青年ふたりの美しさです。親友の息子を愛する母親ふたりの映画に「美しい絵の崩壊」と言うのがあり、グダグダ悩む主役のナオミ・ワッツとロビン・ライトはそっちのけ、アポロのような息子たちに目が点になりました。オートバイ二人乗りはゲイ映画の定番ですが、オゾンの抒情性が、音楽のような旋律を奏でる秀抜なシーンです。

 

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