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令和4年4月のベストコレクション

2022年4月30日

特集「令和4年4月のベストコレクション」⑬
特捜部Q知りすぎたマルコ(2022年 ミステリー映画)

監督 マーチン・サントフリート
出演 ウルリッヒ・トムセン/ザキ・ユーセフ

シネマ365日 No.3917

物足りなかった理由

映画のでき云々以前にストーリーに入り込めなかったわ。「特捜部Qシリーズ」5作目にしてキャストが変わったのよ。主役2人が見たこともないカール(ウルリッヒ・トムセン)とアサドなの。彼らのせいじゃないし、原作にはより近いイメージらしいけど、やっぱりあのイカつい、要領の悪いカールと、カールを支える男一匹、アサドであってほしかったわ。カールが禁煙中でクチャクチャと始終ガムを噛む唾の音が耳障り。アクションは2人ともダサい。事件の鍵を握る少年マルコも印象が弱い。物置同然の汚い狭い部屋に押し込まれていた特Qが、署内のさっぱりしたオフィスにデスクを構えているのにも違和感がある。一言でいえばマイノリティゆえに存在感のあった彼らが、陽の当たる場所でぬくぬくしているのが、シリーズを1本残らず見てきた「特Qファン」の不興を買ったと思える▼ストーリーも平坦だわ。外務省の職員スタークが5年前に失踪した。警察はわずか2週間で捜査を打ち切った。理由はスタークのパソコンからいかがわしい画像が見つかり、小児性愛者事件なら管轄外だというのだ。マルコという少年がデンマーク国境を越える列車で拘束され、スタークのパスポートを持っていた。事情を聞くが徹底黙秘、施設に預けたら脱走した。スタークは水泳のコーチをしていて、少女レイプで訴えられていたが、カールが聞き込みをするうち、彼を知る妻や同僚は絶対にそんなことをする人物ではないと口を揃える。しかし外務省の上司・タイスに会ったカールは彼が犯人だと断定した。話しながら「彼は大汗をかいて何度も顔を拭った」からだそう。カールは理屈より直感で勝負する刑事だが、いきなり犯人断定は戸惑う。レイプされたという少女に事情を聞きに行った直後彼女は殺された。事件の背後には汚職と収賄があり、スタークは横領された開発支援資金を調査するうち殺害された、その目撃者がマルコ少年とわかる。マルコを追え。追走劇となる。カールは鈍足だ。やっと容疑者を追い詰めたら後ろからガツンで気絶する。アクション・ミステリーの爽快感がない。アサドの風貌もどことなく丸い。黒幕は世界的な不動産会社のオーナーで寝たきりだ。彼がタイスを指示して調査を妨害していた。タイスは憂鬱な亡霊のようなオーナーを殺し、彼も上役レニに殺される。放っていても犯人に辿り着く筋書きはヘンテコに複雑でないだけ、わかりやすいといえばわかりやすいが、物足りなさにも通じる。ラストはレニが事件の概要を報道陣の前でトクトクと解説しているところでエンド(だったと思う、寝てしまったから)▼悪口を並べたが、本当にそれだけが面白くない要因かと考えると、過去の「特Q」シリーズ「檻の中の女」「キジ殺し」「Pからの手紙」「カルテ番号64」では、主演、あるいはキーパーソンに女性がいたことに比べ、女性役の単調さだと思える。確かにスタークの妻の憤りや警察への不信、彼の幼い娘の描いた絵が、マルコ少年を浮き上がらせるきっかけにはなった(ここはカールの面目だった)けれど、レイプされた少女の、自殺と見せかけた他殺事件はろくに調査もされない。マルコ少年は「知りすぎていた」とは思えない薄い扱いだった。カールとアサドのキャスティングは、描き込むべき人物が描き込まれていないゆえ「特Q」ご贔屓筋の八つ当たりを買ったにすぎない。製作陣も俳優も全力投球したはずなのに、何気ないところで足を引っ張られ、惜しい目をした映画だった。

 

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