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特集「最高の悪役」

2022年5月4日

特集「最高の悪役5」④ エドワード・G・ロビンソン
犯罪王リコ (1931年 犯罪映画)

監督 マーヴィン・ルロイ
出演 エドワード・G・ロビンソン/グレンダ・ファレル/ダグラス・フェアバンクス・Jr

シネマ365日 No.3921

ふところの深い演技

後年のエドワード・G・ロビンソンの「深夜の告白」や「飾窓の女」、あるいは「シンシナティ・キッド」などの後で本作を観ると、こんなにシンプルな役をやっていたのだと驚く。田舎町でチンケなギャングだったリコ(エドワード・G・ロビンソン)は、「俺はこんなところで終わる男じゃない。チャンスがないだけだ」と豪語し、相棒のジョー(ダグラス・フェアバンクス・Jr)とニューヨークに来る。大親分ヴェントーリに売り込んで傘下に入り、持ち前の強引さと無鉄砲と射撃の腕でのし上がり、親分を引き摺り下ろしてトップの座につく。ジョーはダンサーとしてクラブで働き同じダンサーのオルガ(グレンダ・ファレル)と恋に落ち、足を洗おうとする。取り巻きはいるがリコが信頼するのは、駆け出しの頃自分を認めてくれたオテロと同郷のジョーだけだ。だからジョーを手放さない。警察の権力の頂点に立ったリコはジョーを宮殿のような自宅に呼ぶ。「お前を見込んでこの道に引き込んだ。力を貸してくれ」ジョーが断ると「俺か女かどっちかを選べ。俺の元で働かないなら女も道連れだ」と脅迫する▼ジョーは女に「ここを出よう。僕らは殺される」震え上がるが女は「いやよ!」と撥ねつけるのだ。「逃げても無駄。リコは必ず見つけるわ。考えるのよ。リコが生きている限り私たちは幸せになれない」肝の据わった女性であります。彼女はギャング一掃を史上命題としている刑事フラティに電話する。裏切った友にリコは拳銃を向ける。「撃てよ、リコ」抗おうともしないジョーにリコは涙ぐむ。「帰るぞ、オテロ」とだけ言って引き返す。刑事が来た。オルガが喋りまくる。「店に押し入りマクルーファ(大物ギャング)を撃ったのはリコよ。ジョーが証人よ」「リコが撃ったのか」刑事の問いにジョーは答えない。男の友情が交錯するシーンです。数カ月後、字幕に「ロケットのように急上昇したリコは貧民街に舞い戻っていた」と出る。ホームレスたちが読んでいた新聞にはデカデカと「ギャングの元ボス・ヴェントーリ絞首刑」。続く記事は「リトル・シーザー(リコ)は行方しれず。闇社会で尊大に生きてきた彼は危険な立場に追い込まれ逃げ回っている。どん底から這い上がってきたリコが、再び奈落の底に落ちるのは当然の結末だ」。リコはまんまと挑発に乗る。フラティが待ち構えていた。「俺が臆病かどうか見せてやる」銃を向けた男に警官隊は機関銃を発射する。倒れ込んだリコの頭上には、ダンサーとして成功したジョーとオルガの公演看板があった▼これといった筋書きではないかもしれませんが、ロビンソンの顔貌が雄弁です。太い黒い眉。低い大きな鼻。野心を秘めた鋭い目。ひき結んだ唇のリアリティに対抗できるのはジャンヌ・モローだけ。元祖ギャング映画であり、ギャングスターとしてロビンソンは一躍名を馳せましたが、彼の懐の深い演技はそれだけに終わらなかった。「深夜の…」では成功したかに見えた保険金詐欺を調査し直す緻密な調査員。「シンシナティ…」では主役のスティーブ・マックィーンもかすむ老ギャンブラーが、鮮明に焼き付きました。本作でも(お前に撃たれるならいい)と命を差し出すジョーと、彼を撃てなかったリコの涙が、ただならぬ友情を物語っています。

 

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