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特集「最高の悪役」

2022年5月6日

特集「最高の悪役5」⑥ スペンサー・トレイシー
春なき二万年(1933年 劇場未公開)

監督 マイケル・カーティス
出演 スペンサー・トレイシー/ベティ・デイビス

シネマ365日 No.3923

友情と純愛そして哀愁

最高の悪役

少年の頃から悪事・非行を繰り返し、ギャングのボスとなったトミー・コナーズ(スペンサー・トレイシー)がついにシンシン刑務所行きとなった。不定期刑(最長30年間)だ。「刑務所を仕切ってやる。イヤになったらいつでも脱獄してやる」とうそぶき、「俺は人気者だ。新聞記者は来ているか」と確かめ、刑務所の入り口で待ち構えているカメラの放列に山高帽をとって陽気に挨拶する。余裕綽々だ。組織のNo.2であるフィンが刑務所長に面会にいき債券5万ドルと引き換えに、コナーズに特別な扱いを頼むが所長には通用しない。債券は目の前で燃やされた。コナーズは規則に応じない。囚人服を拒否した。所長は彼を氷凍室に入れた。さすがに音をあげ嫌がっていた岩石堀場の配置を受け入れる。コナーズは力持ちで、人の3倍働き囚人たちは一目置くようになった。恋人のフェイ(ベティ・デイビス)が面会にきた。孔雀のように着飾りギャングの情婦丸出しである。コナーズは臆し「面会に来るときは着飾るな」と小声で注意するが嬉しさを隠せない。次に彼女が来たときは黒いハットに黒のスーツ。どこから見てもベティ・デイビスで、騎手のようにマニッシュだ▼脱獄する日は土曜日だった。土曜には悪いことが起こると信じているコナーズは仲間に加わらなかった。脱獄は失敗し首謀者は自殺する。所長に呼ばれた。電報だ。フェイが自動車事故で重傷を負い回復の見込みはないと医師が伝えていた。「かわいそうに。彼女は俺のすべてだ。何もできない」。打ちひしがれたコナーズに所長が「信用釈放制度」を適用する。「彼女を見舞え。今から汽車に乗り明日中に戻れ。君が逃げれば私は終わりだ」。「俺は裏切らない。ここに必ず帰る」。病院に来たコナーズはフェイの事故がトップの座を狙うフィンの暴行だと知る。コナーズの保釈金がほしいフェイは犯人を訴えず、示談にして5000ドルを要求していた。フィンが金を持って病室にきた。「死ね、ゲス野郎」男ふたりが乱闘になる。銃声が響く。撃ったのはフェイだ。翌朝所長の家に地方検事が電話した。「釈放したコナーズがフィンを殺したぞ」。新聞は所長の失態だと書き立てた。コナーズは貨物船での密航を手配し、深夜に乗り込む準備完了だった。もうすぐ12時だ。所長がタイプした辞表にサインしかけたとき、看守長がコナーズを連れてきた。「戻ると約束した」彼は短くいって元の自房に入った。判決は殺人罪で死刑だ▼執行の夜がきた。所長がフェイを伴って面会にきた。「私は自白したのよ。撃ったのは私であなたは無実だと」。コナーズは所長に「フェイは俺を庇っているのさ。フェイ、俺にも正しい行いができる。その機会を奪うな」。「私と結婚して」とフェイが頼む。コナーズは沈着に「死刑囚との結婚は汚点になる。生活のために働き君を幸せにする男を見つけろ。君を充分に愛した。あの世まで連れて行けない」。タバコを咥えたコナーズに所長が火をつけてやる。映画はそこで終わる。「さらば友よ」のラストは本作のオマージュでしょうか。悪を稼業としてきた傲岸な自信家コナーズが所長と結んだ男の友情、フェイに見せる寂しがり屋の横顔、執行前に吹く死刑囚のハモニカの哀愁。随所にマイケル・カーティス監督の精巧緻密な職人技が光る。彼の代表作として「カサブランカ」がすぐあがるが、本作だってgood! スペンサー・トレイシーとベティ・デイビスのコンビネーションだけでも一見に値する。タイトルの「二万年」はシンシン刑務所における受刑者たちの受刑期間をトータルしたもの。同刑務所はニューヨークから北に48キロ。警備レベルは最高度を言われ、有名な受刑者に犯罪史上最悪の殺人鬼と呼ばれたアルバート・ハミルトン・フィッシュ。電気椅子で処刑された最初の女性死刑囚マーサ・プレイス。夫を謀殺したことにより32歳で刑死したルース・ブラウン・スナイダー。スパイ事件のローゼンバーグ夫妻らがいる。 

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