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特集「最高の悪役」

2022年5月8日

特集「最高の悪役5」⑧ アイダ・ルピノ1
夜までドライブ (1940年 劇場未公開)

監督 ラオール・ウォルシュ
出演 アイダ・ルピノ/ジョージ・ラフト/ハンフリー・ボガート/アン・シェリダン

シネマ365日 No.3925

つくづくいい女優

最高の悪役

映画の後半はアイダ・ルピノの独壇場です。長距離トラックの運転手である兄弟がいる。兄がジョー・ファブリーニ(ジョージ・ラフト)、弟がポール(ハンフリー・ボガート)。睡眠も満足にとれず風呂にも入れず、家に帰るのは2週間ぶり。弟は「この仕事に、私生活が蝕まれる」と懐疑的になる。兄は借金を返しトラックを数台購入し、会社を興して経営者になるのが夢だ。ジョーの親友エド・カールセンが紹介してくれたレモンの搬送で大儲けしたのも束の間、過度の疲労でポールが居眠り運転し、トラックは大破。ジョーはかすり傷だったが、ポールは右腕を失った。エドは陽気な太っ腹の男だった。ジョーとポールを雇いマネジメントを任せる。家庭は安定し、ジョーはカフェで知り合ったキャシー(アン・シェルダン)と恋仲になる。エドの妻ラナがアイダ・ルピノだ。虚栄心が強く金遣いが荒く、気のいい夫はなんでも言うことを聞いてやる。ジョーは元カレだ。夫に満足できない妻はジョーに言いよるが、彼はよりを戻そうとしない。何を言っても「はい、カールセン夫人」「わかりました、カールセン夫人」と社長夫人と従業員の立場をハッキリさせる。エドを傷つけたくないのだ。ラナは豪腹である▼新居完成祝賀パーティーにジョーも呼ばれた。着飾った美々しい妻にエドは上機嫌で酒を過ごし妻の運転で帰宅する。ラナは眠りこける夫を「泥酔したブタ野郎」と吐き捨てた。人が通り過ぎる時だけ反応する電子シャッターの前で、一瞬足を止めたが通り過ぎた。エンジンをかけたままの車に夫は放置され、ガレージは閉まった。地方検事局でラナは検事の聴取を受ける。「私の力では夫を車から降ろせなかった。いつもは自分で戻ってくるので、多分そうするだろうと思った」とさめざめと泣いた。一酸化炭素中毒による事故死となった。ジョーを共同経営者にして一緒にやろうと提案する。「私は会社を守れるし、あなたは夢が叶うわ」。ジョーは了解する。彼をデートに誘ったラナは「行けない。その日はキャシーと結婚するのだ」と断られた。「私を捨てるなんて。ただの運転手を拾ってあげたのに。スーツを着れるのは誰のおかげ? あなたは私のものよ。彼女に渡さない。殺人までしたのに。わかる? エドを殺したのよ。ふたりの関係に夫は邪魔だった。私は殺したくなかったのに、あなたが殺させたのよ。キャシーと結婚してもいい。私のそばにいて」。ゴシップを嗅ぎつけた新聞は「運送業の男、人妻と不倫殺人」と書き、ファブリーニは共犯で起訴された。収監中のラナにキャシーが会いにくる。「真実を言って。ジョーは事件ともあなたとも無関係よ。彼があなたに手を出すわけがない」と、キャシーは微動だにしない。ラナは逆上する。「真実の愛を知っているのは私よ。彼を一生離さない」「どこまでも自分勝手ね。ジョーはあなたに見向きもしなかった。あなたの本性を知っていたのよ」。打ち砕かれたラナは証言席で錯乱した。支離滅裂な言葉を口走る彼女に判事は退廷を命じ、精神鑑定が終わるまで延廷。施設収容となった。ジョーは無罪放免だ。この間わずか数分、持ち時間の短さを計算し尽くしたアイダ・ルピノは、精神を喪失した女に演技を集中させた。奥歯が見えるまで大きな口を開けて叫んだ女優は、知る限り「ウォー・レクイエム」のティルダ・スウィントンくらいだ▼キャシーはしたたかな女だった。いづらくなった会社から手をひき「株はみんなでわける」そうジョーは言った。ようやく手に入れた高収入と社会的立場を手放すなんて馬鹿げている。キャシーはジョーの同僚に「会社を思うなら存続のため経営者として残るよう」辞任に反対してくれと頼む。誰が社長でも給料さえきちんと出るなら文句ない。主だった従業員は口を揃え「社長を続けてくれ」。めでたくハッピーエンドだ。キャシーも大した女だが、どう見てもアイダ・ルピノの悪役なしに本作はスカだった。いい女優だと思う。

 

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