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特集「怖いものみたさ」

2022年5月13日

特集「怖いもの見たさ4」③
黒人魚(クロニンギョ)(2019年 ホラー映画)

監督 スヴィヤトスラフ・ボドガイエフスキー

出演 ヴィクトリア・アガラコヴァ/ソフィア・シドロフスカヤ/エフィム・ペトゥルニン

シネマ365日 No.3930

私を愛している?

特集「怖いもの見たさ4」

ゆれる人魚」とか「ブルー・マインド」を想像していたら全然違ったわ。ロシア民話をベースにしたセクシャル・デーモンの話。男に裏切られた女リーサ(ソフィア・シドロフスカヤ)が自殺し、墓は湖に沈んでいた。水泳選手のローマ(エフィム・ペトゥルニン)はガールフレンドのマリーナ(ヴィクトリア・アガラコヴァ)と、父から譲り受けた古い別荘に行った。マリーナは改築してここに住もうと言う。ローマの友人たちがやってきてバチェラー・パーティーとなった。ストリッパーを呼び盛り上がったが、マリーナに気兼ねしたローマは湖に散歩に出て泳ぐ。藻の入りみだれる暗い水中で激しく水を叩く音がして、桟橋に上がると若い女が長い髪を櫛削り「私を愛している?」と聞いた。魅入られたローマはキスを交わし、湖のほとりで失神した▼別荘から戻って以来ローマの様子がおかしいと、マリーナはローマの姉オルガに相談する。水泳選手の彼がプールで溺れかけたのだ。姉はロシアの精霊ルサールカに取り憑かれたと判断した。精霊はリーサに乗り移っていた。彼女を鎮めるには彼女の欲しがっているものを与えればよい、そう判断したローマたちは桟橋に彼女が落としていった櫛を与えるが、リーサは満足しない。昔リーサに「私を愛している?」と聞かれ返事しなかった父は妻に湖へ引きずり込まれた。「あの女が欲しがっているのはこの私だ」。父は一身を犠牲にするが、どっこいリーサは「ノー」。彼女の狙いはローマだ。リーサは悪鬼の形相をむき出し、ピラニアみたいな牙がびっしり並んだ口をパクッと開けてローマに襲いかかる。オルガがふと漏らした「髪には霊力がある」という言葉を思い出したマリーナは、リーサと格闘するローマに「髪を切って、髪を」と叫ぶ。切るとリーサは苦悶の表情と共に醜悪なルサールカの正体を現した。湖から出てこようとするリーサに、彼女がこれまで取り殺した無数の霊が手を伸ばして湖に引きずり込んだ▼古くから伝わる精霊や妖精の伝説は地方によっては美しい女性、あるいは悪霊、奇抜な妖怪といった形をとりますが、本作は髪振り乱したグロテスクな魔女。ワイルドでパワフルなうえ、ボロ櫛やおじいちゃんは要らん、若いピンピンしたイケメンがいいとは、現実的な精霊ですが、わからんでもない。深い森や湖、人跡未踏の氷の凍土といったスラブ圏では土着の伝説伝承が、キリスト教文化や制度に変形されることが少なく、原型を残して生き残ったと思われます。「私を愛している?」と尋ね、「愛している」と答えればもちろん、「愛していない」と答えてもどっちみち殺すなんて「女は罪深いもの」という、男社会の潜在的恐怖、魔女裁判や宗教裁判で都合の悪いことは女のせいにして排除してきた怨念が原型になっているのでしょうか。

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