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特集「怖いものみたさ」

2022年5月16日

特集「怖いもの見たさ4」⑥
ミラーズ呪怨鏡(2015年 劇場未公開)

監督 スヴィヤトスラフ・ポドゲイエフスキー
出演 アリナ・ババク

シネマ365日 No.3933

スペードの女王

ポケットに手を突っ込んだら10円玉が5枚あった。取り出してつらつら見ていて、悪霊というのはこのお金に似ているなと思った。10円玉5枚には性別はむろん善も悪もないのだけど、巡り巡って万となり億となり、それを持った人次第でとんでもない「悪霊」になりうる。本作は「黒人魚」に続くロシア産ホラーです。登場する悪霊は「19世紀の終わり頃、没落貴族の女性が孤児院を開いた。救済が目的ではなく助成金目当てで、金を手に入れると子供をバスタブに沈めて殺した。沈める前に子守唄を歌った。19人の子供が犠牲になり事件が明るみに出て女は髪と舌を切られ生き埋めにされた。20世紀の初めには都市伝説となり、髪を剃った黒衣の女を人々はスペードの女王と呼んだ。記録によれば1963年、3人の子供がキャンプ中に死亡、鏡の中に幽霊を見たそうだ。1985年2人の19歳の女性が自殺した。黒衣の女のせいだとされた。1998年少年がビルから飛び降りた。近くの人が黒い衣の女を見たという目撃証言がある」と悪霊研究家スミルノフが歴史を解きほぐす▼自分の娘アーニャ(アリナ・ババク)が悪霊に狙われている、と悟った父親が、悪霊を排撃する方法はないかとスミルノフに訊くと「ない」。でも父親の懇請に負け一度調べてみようとアーニャに会うことになった。スミルノフは彼女がはめている指輪に目を止める。彼女が部屋に落ちていた指輪を拾ってはめたものだ。これが悪霊の目印になっている、外せと外科バサミ(彼は医師)で指輪の環を切って窓から捨てる。悪霊は外れた、これで安心、ではなかった。スペードの女王は少女そのものに乗り移って、アーニャは朝食のテーブルで母親に切りつけ、ひきつけを起こして病院に搬送された。「ねえ、パパ。新しい女、見つけた?」と不倫が原因で目下妻と別居中のパパにいやらしく訊く。すでに少女をのっとった、とみたスミルノフは、一か八かの荒療治を決める。一旦アーニャを死なせ、新しい宿主を見つけにアーニャの体を離れた女王をネズミに憑かせようとする。何となればネズミとヒトのDNAは似ているかららしい。でも見破られてしまった。パパは自分に取り憑かせ娘を救おうとするが、スミルノフは「お前の狙いは俺だろう」と挑発し、女王を取り込むとアーニャを蘇生させ自殺して女王もろとも葬る▼スミルノフの自己犠牲でアーニャは救われた。父親は母親とよりを戻し、娘の誕生日を祝っていた日、ドアを開けると雑誌の購入を勧誘に来た女性がいた。彼女の指には指輪がある。「それを捨てろ」とパパ。女性は何のことかわからない。もちろん捨てたりしないだろう。こうやって女王は転々と次なるカラダを求めて世界を移動する。自分の無慈悲な行いによって身を滅ぼした女性が、逆恨みして悪霊となり子供を呪い殺していくなんて、何で女はこう悪役なのよ。でも「スペードの女王」というミステリアスな語感が本作の凡庸さを救っているわ。これが「ハートのクイーン」だと恋愛の破滅譚か、「ダイヤのキング」だと欲ボケ物語かという先入観が先んじるけど、プーシキンの「スペードの女王」以来、彼女は男が最期を決める幻想と破滅の存在よ。本作での悪霊はかなり小粒だけど、ネズミとヒトのDNAを間違えなかったことが救いね。

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