女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「別室でミステリーを」

2022年5月25日

特集「別室でミステリーを5」⑤
TABOO タブー(上) (2017年 テレビ映画)

製作BBC
監督 クリストファー・ニホルム/アンダーズ・エングストロム

出演 トム・ハーディ/ジョナサン・プライス/ウーナ・チャップリン

シネマ365日 No.3942

異常な息子

特集「別室でミステリーを5」

1814年ロンドン、アフリカに渡り死んだと思われていた男、ジェームズ・ディレイニー(トム・ハーディ)が父親の葬儀に列席するために戻った。父は運輸会社を経営していたが謎の死を遂げた。ジェームズは遺産としてヌートカの土地を引き継いだ。ヌートカをめぐって対中国との交易権独占を狙う米国と、東インド会社の抗争が表面化し、土地所有者であるジェームズが「第三の男」として浮上します。ヌートカとはディレイニー家の顧問弁護士によると「岩と先住民だけの使い物にならない土地であるだけでなく、所有者に危険をもたらす」呪われた土地なのですが、東インド会社の狙いはヌートカの確保だった。ヌートカは中国への通り道であり、そこを所有する者は莫大な通商利益を独占することになる▼東インド会社とは今で言えばグーグルとかウィンドウズとか、アップルみたいなトップ企業です。無敵スペイン艦隊を破り、海運国として本格的なアジアへの道を開いたイギリスで、有力商人たちがエリザベス1世に国王の代理として交易を占有する勅許を求めた。女王が与えた。商人たちは英国東インド会社を設立、裕福なヨーロッパ人が求める唐辛子、胡椒、織物、紅茶などの取引を独占した。ヌートカの所有権を売れと東インド会社(以下、会社)はジェームズと交渉するが彼は一蹴する。自分が死んだらヌートカはアメリカに遺贈すると遺言書を書き、彼を殺してしまうと自動的に土地はアメリカのものになるから会社は手を出せなくなった。会社の総帥ストレンジ卿(ジョナサン・プライス)はジェームズと真っ向から対立する。簡単に言うとジェームズと東インド会社の策略対策略、暴力対暴力、殺し対殺し、です。物語に絡む脇役や彼らの役割が多彩を極めます。良作の宝庫と称されるBBCが、巨額を投じた綿密な時代考証、風俗、港湾に船舶、東インド会社の当時の豪華な室内インテリア、王族の衣装、ロンドン塔の再現などそれだけで見応えがありますが、やはり描かれた人間の掘り込みがいちばん面白い。ジェームズは精神を病み施設で死んだ母親譲りの異常な性格とされる。妻の死後父親は後妻を娶って息子を東インド会社の軍学校へ。ここで生来の凶暴性が表れ1802年突如アフリカに。理由ははっきり説明されないが、そのひとつは異母兄妹であるジルファ(ウーナ・チャップリン)との近親相姦だった。彼は妹と再会した時「アフリカに行ってもお前への愛は消せなかった」と告げた。そこで彼が愛に生きる男だと思ったら大間違い。ジェームズはアフリカで「ひどいこと」をして毎夜のように悪夢にうなされ、呪いを払う魔術を使ったりする。母親への思慕が強い。彼がストレンジ卿と最後の勝負をつける時、切り札としたのが実はアフリカでした「ひどいこと」なのである。ストーリーは謎を孕みながら、裏切りと謀略を展開する。主役はもちろんトムハことトム・ハーディなのだ。「アフリカの菌が血管を這う虫を介して脳に入った男」と噂される男。無口で実行力があり、情に溺れず娼婦でも召使いでも、殺し屋でもセレブの商人でもその使用人でも、職業、身分、出生、貧富の差を問わず本物の人間を見抜く、なんてところがカッコいいのだ。彼の出で立ちは黒いロングコートに山高帽、ドタ靴をユニフォームのように着用し無精髭。ロンドン中が彼を探し回っている、らしいが、365日24時間、こんな格好で歩いていたら探さなくても見つかりますよ。彼には計画を託す数人の協力者がいる。父親の妻だと名乗りを上げた若い美人の女優ローナ、中僕の召使いブレイス、やばい仕事の御用達は殺し屋のアティスカ、東インド会社の書記官(夜は女装のゲイ)ゴッドフリー。彼はジェームズの耳となり目となり敵陣営からの情報を入手します。さらにジェームズが米国に調達する火薬製造を極秘裏に引き受ける奇人化学者チャムリーを、イギリスの名脇役トム・ホランダーが演じます。これに拮抗する仇役がまた渋いのだ。

 

あなたにオススメ