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特集「別室でミステリーを」

2022年5月28日

特集「別室でミステリーを5」⑧
プラチナデータ(2013年 ミステリー映画)

監督 大友啓史
出演 二宮和也/豊川悦司/鈴木保奈美/水原希子/生瀬勝久

シネマ365日 No.3945

SFミステリーの新領域

シネマ365日Ⅺ 特集「別室でミステリーを5」

ミステリー映画はエンターテインメントの本能を満足させるのが基本だ。本作でその基本にあたるのが「プラチナデータ」をめぐる真相の暴きあいです。国民のDNA情報を国の一元管理とする「DNA法案」が国会を通ろうとしている。しかし完璧なリサーチシステムが完成すると、困る人間がいる。政治家、官僚、その家族といった特殊階級が、犯罪者として摘発されないように「NF」(not found=該当者なし)として守られたのがプラチナデータだ。開くには「モーグル」という補完システムが要る。プログラムの開発者、蓼科耕作・早樹兄妹が殺された。「モーグル」はどこにある。主人公は神楽龍平(二宮和也)という、DNAシステム万能主義を標榜し、そのため人生を狂わされた青年。二重人格である彼の治療とカウンセリングにあたった精神科医・水上利江子教授(鈴木保奈美)、龍平の別人格リュウと恋仲になる自閉症の天才数学者早樹、捜査を担当する浅間刑事に豊川悦司。イヤミ丸出しの官僚に生瀬勝久ら▼これからの犯罪捜査は「俺の時代だ」と鼻高々だった龍平が、容疑者のDNAが自分と一致した、つまり殺人犯は「俺か?」となってから浅間刑事に対する言葉遣いが謙虚になったり、彼の逃走シーンが長すぎて悠長だ。素人の研究者にしては巧みに逃げすぎるとか、彼が運転するバイクでの爆死に至ってはニノ君を殺すはずないだろ、とか余計な詮索が入り込む。NFの13番が犯人だ。NFこそが故意に隠蔽されたプラチナデータの正体だ。犯人に行き着くまで引っ張り回されるのは、ミステリー常道のお楽しみだ。しかし「DNA法案」が通過することによっていちばん美味しい目をするのは誰か、あるいは高度なシステムを構築できるアタマの持ち主は誰か、最も「らしく」ないヒューマンな人物は誰か、などと絞っていったらこの人に行き着くのはそう難しくない。そう水上教授です。彼女の考え方こそホラーだ。「私は医師として親に苦しめられている数多くの子供たちを見てきた。虐待、殺人、子供の将来を考えず命を絶つ親。でも彼らだけ悪いのではないと結論に至った。生まれてくる子が生まれながらの〝欠陥品〟である場合もある。だからあなた(龍平)のような優秀な人物をもっと生み出す必要がある。創造主に反対する人間を排除しなければならない」。あんた、何様よ。映画の前段で紹介される連続殺人の被害者はみなDNA法案の反対者だった。つまり創造主に反対する人間だったってことね。おまけに龍平と早樹のDNAを組ませることによってDNA操作システムを作り上げようと企んだ。「俺は操り人形だったってことか」。龍平は水上教授の危険な思想を止めるべく、彼女を殺します。「運命や可能性は決して遺伝子や科学の領域ではなく、その人の自分自身の意思だという大切なことに気づいていなかった」という、いい意味で言えば健全にして良識ある龍平(リュウ)の述懐でエンド。アメリカのスパイまで登場して盛りだくさんなサイドストーリーのおかげで、全体が散漫になった恨みはありますが、SFミステリーというジャンルに踏み込んだ新しい発想で1票。

 

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