女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

令和4年6月のベストコレクション

2022年6月12日

特集「令和4年6月のベストコレクション」⑫
パーフェクト・ケア(下)(2021年 社会派映画)

監督 J・ブレイクソン
出演 ロザムンド・パイク/ピーター・ディンクレイジ/エイザ・ゴンザレス/ダイアン・ウィースト

シネマ365日 No.3960

私は子羊じゃない 

特集「令和4年6月のベストコレクション」

母親の強奪に失敗したローマンはマーラを始末しろと命じる。車ごと川に突っ込み九死に一生をえたマーラ。ボコボコになり息も絶え絶えにされたフロン。「あなた次第よ、フロン。ダイヤを持って逃げる? それとも車のナンバーから敵の住所を突き止める?」「何か策が?」「あるわ」。マーラとフロンはローマンの車を襲撃し手下を片付け、ローマンを薬で眠らせると下着一枚にして路上に放置した。身元不明者の薬物過剰摂取者として搬送、身体能力を失った身元不明者に州が後見人をつけた。もちろんマーラだ。ベッドで身体中に管のついたローマンに「負けを認め私の口座に1000万ドル振り込むのよ。そうすれば母親も取り戻せる、あなたは自由になり私は消える。応じないなら殺す」「別の提案がある。私と組まないか。君は嫌いだが稀有な人材だ。後見人ビジネスは巨大ビジネスに大化けする。全国規模の後見人請負事業を立ち上げ君を共同経営者にする。何万人もの後見人を雇い何十万人の高齢者を手中に収め何百億ドルを合法的に稼ぐ」▼マーラは全米超富豪のひとりとなった。テレビ出演を終えた彼女を、尾羽うち枯らしたフェルドストルムが待っていた。フロンが顔色を変える。「今さら何なの?」ウンザリ顔のマーラに「母が死んだ。面会もできず、最後までたった独りで」。いうなり発砲した。胸に当たった。男は取り押さえられた。マーラはかすむ意識でとりすがるフロンの指を握った▼オープニングでマーラはこんな独白をする。「善良な人間なんていない。人間は2種類だ。奪う者と奪われる者。捕食者とその餌食。ライオンと子羊。私は子羊じゃない。獰猛な雌ライオンよ」。野心に燃えるサクセス至上主義者だ。法の範囲とはいえ、高齢者を食い物にするえげつなさに辟易するが、日本でもお年寄りを絶好のターゲットにする犯罪は後を絶たない。本作はひどいけれど現実的な映画だと思う。マーラが唯一愛するのはフロンだ。フロンはグルだった医師のカレンが殺害されたと知り、荷物をまとめて逃げようとする。マーラが抱きしめて落ち着かせる。「私が何千回男に脅されたと思う。でも彼らが行動したのは2回よ。男は脅すだけが能なのよ」とは言ったものの、どっちも命を狙われたあと、さすがにフロンに選択を任せる。フロンが逃げるというなら逃げる、踏みとどまるならやる。そして男への報復を選ぶ。通観するとこの映画は男(ローマン)対女(マーラ)の構図になっていて、最終的にマーラは彼女を恨む男に殺害される。こんな女は生かしておけないってわけね。散々人を泣かせてきたからやむなしとも思うが、野心を遂行する頭と度胸のよさと処理のスピードに(すごいなあ)…感服したのも事実▼ロザムンド・パイクはゴールデン・グローブ賞主演女優賞受賞。ビッチのできる新たな女優にまずは拍手する。もうひとり、ジェニファーのダイアン・ウィースト。彼女もすごい人で、「ハンナとその姉妹」「ブロードウェイと銃弾」で2度アカデミー賞助演女優賞を受賞した。史上2度の受賞は彼女と「アンネの日記」「いつか見た青い空」のシェリー・ウィンタースだけ。J・ブレイクソン監督はデビュー作「アリス・クリードの失踪」で注目を集め、本作が長編3作目の新進気鋭の監督。

あなたにオススメ