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特集「ナンセンスは素敵だ」

2022年6月21日

特集「ナンセンスは素敵だ8」⑤
プリズナーズ・オブ・ゴーストランド(2021年 ホラー映画)

監督 園子温
出演 ニコラス・ケイジ/ソフィア・ブテラ

シネマ365日 No.3969

闇鍋の世界

特集「ナンセンスは素敵だ8」

当惑しながら観ました。園子温監督のハリウッドデビュー作ですけど、この映画で日本を理解した気になられたら困るなあ。サムライ、寿司、ニンジャ、花魁、江戸時代と西部劇、混淆する人種と文化が展開する。耐えながら観ていて、やっと物語らしい筋があるのがわかりました。監獄に六尺褌一丁で監禁されていた銀行ギャング、ヒーロー(ニコラス・ケイジ)が引き出され、サムライ・タウンを牛耳るボス、ガバナーが、ゴーストタウンに誘拐された孫娘バーニス(ソフィア・ブテラ)を、5日以内に救出したら自由放免にしてやると言い、黒いボディスーツを着用させる。腕、脇腹、下腹部に赤いボタンがつき、女に乱暴したら警報がなるとか、指示に反すると爆弾にスイッチが入るとか、5日過ぎたらお前は木っ端微塵だとか、怖い仕掛けがついている▼ゴーストタウンとは名の通り、生きてはいるがゾンビみたいに生気を失った人間の集まり。巫女、カウボーイ、道化。ラットマンと呼ばれる文字通り「ネズミ」みたいなグループだ。着ている物は布か、藁か、材質も色も判別し難い。リーダーが言うには「私たちは囚人だ。ゴーストランドからは逃げられん。ひたすら耐え、生き延びるだけだ」。ヒーローは「バーニスを連れ帰りたいだけだ、どこにいる」。誰かが「マネキンに紛れている」と教える。顔と体がプラスチックで覆われ、顔面に生じた亀裂からわずかに素顔が見えるが、言葉は喋れず、感情がない。ジャンルの境界がないといえば「サムライ・タウン」は国際色渾然。遊廓があれば江戸時代の横丁があり、両刀を携えた侍とテンガロン・ハットのカウボーイが歩く。ガバナーはバーニスを孫だと言うが、めぼしい女の子を誘拐、虐待してきた変態男である。バーニスはゴーストタウンに逃げ込んだが、ここも地獄の底だった。しかし住人らはヒーローが怪我して赤い血を流すと「この男こそ救世主だ」と歓喜する。ヒーローはバーニスとゴーストタウンから脱出しようするが車の修理やら燃料の手配やら、人手が要る。「俺を助けるなら一緒に来い」と呼びかけ大脱走。ゴーストタウンは大爆発を起こして消滅する▼言葉と感情を失っていたバーニーは、環境激変のおかげでマネキン状態から覚醒する。無事サムライタウンに帰還したヒーローとバーニス。ボディスーツの爆弾を解除しろとガバナーに迫ったら、そんな約束はした覚えがない、お前は勝手に死ね。ヒーローとガバナーの用心棒の侍、ヤスジロウとの殺陣とアクションがあり、バーニスが華麗な蹴りをみせ、死に瀕していた同僚の遊女を救出する。これはギャングだったヒーローが人を助けるヒューマンストーリー? バイオレンス? ゴーストタウンの囚人は自由を求める現代人の戯画? 価値観をどこに置いたらいいのか、よくわからないのですが、ガバナーが死んで「サムライタウンは素晴らしい街になるだろう」という大団円だ▼意気込みはわかるけど、園子温監督の作品とすれば「冷たい熱帯魚」とか「恋の罪」のような、胸が悪くなるようなグロテスクとサイケがなく、ただもう騒々しい闇鍋の世界。二度と観たくない。

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