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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2022年6月24日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス5」③
幕末太陽傳 (1957年 群像劇映画)

監督 川島雄三
出演 フランキー堺/左幸子/南田洋子/石原裕次郎/芦川いづみ

シネマ365日 No.3972

叙情とノスタルジイ

新選組始末記 (1963年時代劇映画)

この映画。冒頭の語りから魅力的だ。「北品川カフェー街と呼ばれる16軒の特飲街がある。従業の接客91人、平均年齢34歳。売春防止法のあおりを食って、340年の品川遊郭の歴史も幕を下ろす。この物語の時代は文久2年末。あと6年で明治になる年だ。北の吉原と並び称された南の品川もようやく衰えを見せ始めていた。とはいえ、100軒近い遊女屋に1000人以上の女が妍を競い相応の賑わいを見せていた」。舞台となる遊郭相模屋に登楼したのが佐平次(フランキー堺)一行。散々飲み食いして遊んだ挙句無一文とわかり、怒った楼主・伝兵衛は佐平次に行燈部屋をあてがい、こき使って無銭飲食の返済に充てようとした。居残り佐平次の異名をとるこの男、いつの間にか玄関に飛び出し番頭みたいに相模屋を切回し始めた。要領のいいこと、機転の利くこと、トラブルの解決、溜まったツケの取り立て、親子ゲンカの仲裁、図々しいようで人当たりが良く、仕立物まで上手に縫う佐平次に、ナンバー1を競うおそめ(左幸子)とこはる(南田洋子)までのぼせてしまい、もめ事を解決するたびにチップを弾む。彼の人気はたちまちウナギのぼり▼佐平次を取り巻く人物たちが人間味タップリだ。大工の娘おひさ(芦川いづみ)は、父親の借金のカタに相模屋で女中として働かされている。親父は娘を女郎に売るつもりだ。それを知った娘は相模屋の息子・徳三郎(遊び人で親父の怒りを買い座敷牢に閉じ込められた)に会い、「私を嫁にしてくれたら私も売られなくてすむし、あんたも所帯を持って落ち着ける」と掛け合った。おひさがまんざらでもなかった息子はOK。佐平次は2人の駆け落ちを助けるが、浪人・高杉晋作(石原裕次郎)に頼んで、俄仕立ての婚礼を小舟の中で挙げさせる。情のある男なのである。相模屋にとぐろを巻いていた長州藩の一党は高杉に久坂玄瑞(小林旭)、志道聞多(のちの井上聞多=二谷英明)ら。彼らが御殿山英国公使館の焼き討ちを目論んでいることを知った佐平次は、公使館の工事に出入りしている大工に見取り図を作らせ高杉に、ちゃっかり売りつけた▼貸本屋金造はアバタだらけの顔のためアバ金と呼ばれる。「あ〜あ、ヤンなっちゃった、死んじゃおうかしら」と口にしたおそめと心中しようとした。ところがおそめは心変わり。海に落ちた金造に「金ちゃん、悪く思わないでおくれ」と手を合わせスタコラ。金造は海から這い上がり一芝居打って金を巻き上げようと、棺桶に入って担がせ相模屋の玄関先で嫌がらせをする。ここは穏便にと番頭が包んだ金を駕籠かきに渡そうとした瞬間、飛び出した佐平次がヤカンの熱湯をオケの中に注ぐと金造が跳ね起き、駕籠かきもろとも飛んで逃げた。あとで落ち合った佐平次、もちろんせしめた金を山分けだ▼潮時だと見た佐平次は相模野を出て行くことにする。彼の役割は時代の変わり目の見届け役であろう。遊郭の灯はいずれ消える。西洋の文化が満ち潮のように流れ込んでくる。日本ではなくアメリカに目を向けてもいい。バイタリティに富んだ彼だが、気になる妙な咳をしていた…川島雄三監督のスピーディーな演出が変わりゆく時代を活写する。男も女もビジネスも政治も満ちてくる新しい制度と文化に向き合う。感傷のない、それでいて役者たちが、遊郭という特異なステージに体現する群像はノスタルジックで叙情的だ。遊女たちの客あしらいのテクニック、打算的だが憎めない脇役、誰1人として憎めないキャラが、川島の深い、温かい人間観を湛える。

 

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