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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2022年6月27日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス5」⑥
祇園囃子(上)(1953年 社会派映画)

監督 溝口健二
出演 木暮実千代/若尾文子/浪花千栄子

シネマ365日 No.3975

芸者になりたい少女

憎らしいくらいの傑作ね。祇園の芸者、美代春(木暮実千代)が、彼女に入れあげ勘当になった若旦那に言う。「色街は綺麗にお金を使うとこだっせ。私は結婚するつもりなんかあらしません。約束が違う? 芸者のウソはウソにならへんの。お客さんの気持ちに相槌打って面白う遊ばせてあげる、いうのがわからしまへんか?」。苦労知らずのボンボンやから、とため息をついているところへ昔の芸者仲間の娘、栄子(若尾文子)が舞妓になりたいと頼ってきた。父はいるが事業に失敗して病気、「お母ちゃんが死んでからは〝二号の子〟とかいやなことばっかり」言うので飛び出した。「はたで見ているほど、きれいな仕事やない、お母さんに負けん一流の芸者になるのは大変え」と翻意を促すがどんな苦労も耐えるという、16歳の娘の気概に打たれ仕込むことにした▼いわゆる舞妓学校の教科教練は厳しい。「お茶やお花と同じように舞妓は日本の美しい文化の象徴です。しっかり勉強するのですよ」と先生。鼓、笛、太鼓、三味線、日本舞踊はもとより、家では掃除、炊事、雑巾掛け、栄子は目覚まし時計で飛び起き、襷掛けで働く。約1年。「お座敷に出してもどうやら赤い顔、せんでもすむみたいです」と美代春が置屋の女将、お君(浪花千栄子)に報告した。舞妓デビューは少なくみて30万の大金が要る。昭和20年代の30万である。美代春はお君に工面を頼った。栄子改め美代栄は美代春の妹として座敷に出た。「お客の中には成功する人もあれば零落する人もある。でも義理人情を忘れたらあかんえ」と美代春は最初に言うが、世代間ギャップが明らかだ。「お座敷でお客さんが口説いたら、基本的人権を無視したことになります、訴えてもええいうことですか」「そんなことは弁護士に訊きなさい」。お君が早速旦那の話を持ってきた。会社社長の楠田が見初めたのだ。一人前の女になるのは「まだ早いのと違いますか」ためらう美代春に「あの子が座敷に出るお金は楠田さんが用立てた。なんとかしてもらわんと、なあ」。お君は古狐のような視線を充てた▼芸者はハリウッドも顔負けのパワハラ・セクハラの世界です。楠田はプロジェクト受注のために、次期局長と目される官僚・神崎の接待に美代春と美代栄を使う。東京の祭り事に美代春と美代栄を連れて上京した楠田は、密かに神崎を座敷に呼んでいた。自分は美代春を、別座の神崎に美代栄を送りこんだ。神崎が美代栄に迫った時、つんざくような悲鳴が。飛び出した美代春は口を押さえて部屋の隅に縮こまった楠田と、ドラキュラみたいに口の周りを真っ赤にした美代栄を見た。美代栄が楠田の唇を噛み切ったのだ。大騒動のおかげで美代春は楠田から逃れたが、お君の面目は丸つぶれ。借金を返せと美代春に迫り、返すまで「うちに出入りすることはならん」。祇園随一の置屋・お君の怒りが火を噴く。翌日から2人のお座敷は全てキャンセルとなった。しかし〝折れて曲がる〟のが色街の成り立ちだ。お君は楠田が美代春を諦めるはずがないと踏んでいた。彼の会社は大型プロジェクトに有り金をつぎ込んでいる。受注窓口の神崎の機嫌を直させねば破産だ。案の定、楠田の部下が泣きついてきた。お君は言を左右し、気をもませながら「今度は美代春の首に縄つけてでも連れて行きます。私に任せておくれやす」と強気に出た。祇園の裏を仕切る女の意地と貫禄である。そして美代春に会いに行った。

 

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