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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2022年6月30日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス5」⑨
関東緋桜一家(1972年 アクション映画)

監督 マキノ雅弘
出演 藤純子/鶴田浩二/高倉健

シネマ365日 No.3978

女優の花道

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」で、ダニエル・ボンド引退興行と書いて、待てよ、そのものズバリの引退記念作品があったよね、と思い出したのが本作。緋牡丹お竜で一世を風靡した藤純子の主演映画です。主たる配役が書ききれないくらいの錚々たる出演者です。役の重さを均等割し、鶴田浩二とか、高倉健が出張ってきたせいか、藤純子の出番が減ってしまった。彼女の引退記念なら昭和のハンサム・ウーマンにして銀幕の名花であった「緋牡丹博徒」シリーズでいくべきだった。でもま、映画製作も男社会だ、男が惚れる男を登場させ、その男にヒロインを惚れさせねば気がすまなかったのだろう。平凡な顔見世作品になってしまったけど、夜空を焦がす大花火のようなスターの引退映画は、これが最初でその後も例がない▼時代は明治末期。柳橋の芸者・鶴次(藤純子)は、鳶職「に組」の副組頭・河岸政の娘だ。講釈師で北辰一刀流の達人・東風斎呑竜(若山富三郎)に剣術を学んだ使い手でもある。父親が暗殺され鶴次が二代目を継ぐ。物語の主軸は、江戸最高の繁華街である柳橋を、賭場に変えようとする鬼鉄派と、カジノ開発に反対する新堀組の抗争だ。新堀一家を率いる老親分が嵐寛寿郎。彼は河岸政の親友で今は病床にいる。新堀の代貸・常吉は鬼鉄とグルで、まず新堀が最も信頼する河岸政を殺し、一挙に勢力を拡大しようと図った。二代目を継いだものの「に組」の領域で狼藉を働く鬼鉄に鶴次は業を煮やし、賭場の勝負を申し込む。盆に座ったのは客人・旅清(鶴田浩二)だ。鬼鉄の非道なやり方を知っている旅清は鶴次に勝ちを譲る。鶴次には婚約者がいた。「に組」の組頭・吉五郎(片岡千恵蔵)の息子、失踪中の信三(高倉健)だ。その信三が九州から帰ってきたが、墓参りに来たというだけで、父親に会おうともせず、まして鶴次の思いを受け入れようともしない。吉五郎が鬼鉄に襲撃された。新堀の老親分は病死した。鬼鉄は代貸の常吉に加勢を頼み「に組」との出入りに向かうが、客分の旅清が、義理も人情もわきまえない奴は俠客の風上にもおけん、と常吉を切り捨てる。煮え切らなかった信三がようやく腰をあげ鶴次と鬼鉄に挑む。重傷を負った旅清は最後まで獅子奮迅、血の海に浸って死ぬ。自首するという信三に父・吉五郎は「旅のお方。勘違いなすっちゃ困ります」と止め「に組」の問題に「あなたは関係ない。どこにでも消えてくれ」。鶴次が口を挟もうとしたら「お前さんの願った通り町は綺麗になった。もうあんたのやることはない。好きなところに行きなせえ」と信三とふたりの将来を示唆する。鶴次は彼女を見送る組の纏持ちや長屋の人々に「みなさん、お世話になりました」。深々と(観客目線で)一礼して信三の後を追う。藤純子最後のご挨拶だ。冒頭にチマチマとケチをつけたけれど、実を言うと東映の腕力に敬服している。主役・脇役に主演級の実力派を惜し気なく投入したド迫力。コメディ・リリーフの藤山寛美が、顔を出しただけでシーンを食ってしまうのにも拍手。女優の花道としては最高であったろう。

 

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