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令和4年7月のベストコレクション

2022年7月2日

特集「令和4年7月のベストコレクション」②
渚の果てにこの愛を(下)(1970年 恋愛映画)

監督 ジョルジュ・ロートネル
出演 ミムジー・ファーマー/ロバート・ウォーカー/リタ・ヘイワース

シネマ365日 No.3980

圧巻、リタ・ヘイワース

登場人物は少なく、ストーリーは単純なのに愛情の絡み合いが本作を複雑に、ミステリーなものにしています。兄と妹は近親相姦の関係、母親もまた息子に対する執着が、エドの求愛にも振り向かせない。彼女は息子と娘の関係に嫉妬すらあった。エドはロッキーの身代わりができたことでマラの気がすむのなら、とあえて素知らぬふうを装う。しかし最大の秘密はビリーが兄を殺したことにある。ビリーがジョナスに打ち明けたことの顛末がこうだ…▼母親が自分達の関係に気づいた、もう家には居れない、とロッキーがビリーに通告した。行かないで。妹は家を出た兄を車で追った。浜辺で追いついた。「私を捨てないで」「もう決めた。別れる」「一緒に行く、連れて行って」冷たく去る兄に石を投げたら頭に当たって倒れた。駆け寄ると死んでいた。「死体はどうした」とジョナス。「石油タンクの中よ」。それからビリーはジョナスを避けるようになった。彼女の心には今も兄がいる、とジョナス。俺はビリーを愛している、それを知っているから煽るためにわざと姿を見せないのだと自分に言い聞かせる。ビリーが数日ぶりにふらりと戻ってきた。「俺に行くな、と言ってくれ。君のためならなんでも言うことを聞く」とジョナス。「君を愛している」「私は嫌いよ」突っぱねるビリー。「あんたなんかロッキーとは似ても似つかない、最低よ。私は兄さんが好き。だから兄の代わりだと思っていたら、あんたは兄とリンダの関係とか、兄がリンダを愛していたとか、余計な詮索をしだした。あんたなんかただの物乞いなのよ」ジョナスは激怒する。「黙れ」ビリーの首を絞め、気がついたら死んでいた。マラが現場を見た。外は土砂降りだ。ジョナスが出かけようとする。「どこへ?」「警察へ」「行っちゃだめ。石油タンクに死体を隠すのよ。私を独りにしないで。戻ってジョナス!」初めてジョナスと呼んだ▼リタとは娘が息子を殺し、その娘も殺された母親だ。孤独地獄が恐ろしく、ジョナスを独占するために犯行を隠蔽しようとする。娘の死体を石油タンクに放り込めとは、息子と男と女の関係になった娘が疎ましかったのだろう。自分の寂しさばかりを訴えるマラは、同情されにくいキャラだが、それだけで片付ける気にはなれない。本作はリタ・ヘイワースの晩年に近い。52歳だった。「ギルダ」は28歳だった。音楽に合わせ、ゆっくりと黒い長い手袋を腕から外していく「手袋のストリップ」は映画史で語り継がれるだろう。本作の主人公はビリーよりむしろマラだと言える。美しくセクシーで奔放なビリーは「海と太陽に愛された死の天使」というジャケ写の売りが大袈裟で美麗すぎた。むしろはっきり、インフォマニアのように設定したほうが似合っていた気がした▼ジョナスは飯と家と女に縛り付けられるプータローだ。マラから例え偽物の息子であれ、ロッキーを取り上げたらもっと哀れな状態になるとわかっているエドや、仮想でも妄想でもいい、エゴイスティックな愛を必死で守ろうとするマラにしたら、ビリーの近親相姦は世間にないとは言えないフツーのレベルなのである。大騒ぎせず、あんたには若さも未来もあるでしょ、他を当たりなさいよと言ってやりたいのに、またぞろ〝ロッキー〟に手を出すとは、マラはついていない。心理状態から言えばマラはいつか娘を殺すかもしれない。そんな悲劇性を塗り込めた女を、リタ・ヘイワースが圧巻で演じている。

 

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