女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

令和4年7月のベストコレクション

2022年7月4日

特集「令和4年7月のベストコレクション」④
プライベート・ウォー(下)(2019年 伝記映画)

監督 マシュー・ハイネマン
出演 ロザムンド・パイク/ジェイミー・ドーナン/トム・ホランダー

シネマ365日 No.3982

最高のロザムンド

テレビが伝えた。「アラブの春は中東から北アフリカへ拡大、リビアでは数千の市民がカダフィ大佐への不満を訴えました。大勢の市民が抗議中のさなか、殺害された模様」。メリーはリビアのミスラタに入った。戦火から逃げのびた男性が惨状を話した。「まず将校たちが女を犯した。音楽が鳴っていた。犯している間、女は動かなかった。女は低い声でアッラーがあなたを見ている。カダフィがアッラーだと言った」メリーが訊く「何人くらいが? 1000人!」。メリーのモノローグ「戦っているすべての勢力が真実を曖昧にするとき、本当は何が起こっているのかを人々に伝えなければ取材は失敗だ」。編集局長はメールしてきた。「記者が狙われている。前線に行くな」。報道陣宿泊のホテルに、被弾した同僚の遺体が運び込まれた。バスルームにいるメリーがポールに振り向いた。「行くわよ。古い友人にインタビューよ」「素敵なブラだね」「ラ・ペルラ。高級ブランドよ。死体を掘り出されたとき着ていたいから」▼カダフィ大佐インタビューだ。カダフィ「私に退陣を迫る各国首脳に告げる。私は革命指導者であり続ける」メリー「迫害され拷問されるリビア国民は?」「アルカイダの仕業だ。若者を扇動している」「だから内戦の準備を? 大勢が死にます。超大国は戦略的にはあなたを重要としていない。目当ては石油だけ。だからあなたは世界の武装組織に資金を提供しました。それで国際的評価は得られません。あなたを信じた民衆が死ぬのです」ずけずけと言った。カダフィは「世界中の女性の中で君と過ごすのがいちばん好きだ。ライス国務長官より」。メリーの記事「大佐は敵をネズミと呼んだ。下水に追い詰められたのはカダフィ自身だった。一度も戦うことなく、彼の独裁政治は屈辱と死のうちに終わった」。2012年シリア、ホムス。モノローグ「普通の生活が好きだとしても暮らし方を知らない。戦場が最も居心地がいいのかもしれない」▼ホムスでは民間人2万8000人が置き去りにされている。大半が女と子供。彼らはどこに? メリーは避難先に会いに行こうとする。「攻撃が始まる。危険だ」「攻撃が始まる前に場所を教えて」。そこで見る。ストレスで母乳が出なくなり、砂糖と水だけを与えている母親に「あなたの話を聞きたい」「3番目の娘は瓦礫の下敷きになった。紙に書くだけでなく、子供が死んでいることを世界に伝えて。一世代が死につつある。飢えと寒さで死んでいく。それを伝えて」。編集局長「この原稿はアサドの主張に対する反証だ。メリーを撤退させろ」。攻撃が始まる。ポールがメリーを連れて脱出しようとした。それを拒み「戻るわ」「戻ったら死ぬぞ」。振り切ったメリーの後をポールは追った。編集局長が告げる。「チャンネル4、BBC、CNN、全局が君のリポートを報道する。だが機会があり次第、逃げろ」。カメラの前に立ったメリーに「こちらホムスのメリー・コルヴィン記者です。あなたがそこに留まり、記事を書く理由は?」「視聴者にとって戦争は遠い国の出来事ですが、ここには2万8000人の民間人がいます。男と女と子供たちです。冷気と飢えの無防備地帯、電話もない、電気も切られた、人々は僅かな食べ物を分け合い、幼児を抱えた女性と私はここに座っている。彼らは過酷な現状に包囲され、子供たちは何週間も砂糖と水しか口にしていない。2人のうち1人が死ぬのが毎日のことです。シリア政府は民間人を攻撃していないというが、私のいる建物の最上階は完全に破壊されています。この街には何の軍事目標もないのに。政府の言葉は真っ赤な嘘です。今まで私が見た中で最悪の戦争よ」最後の報道となった。放映直後、メリーとポールは砲弾を受け、ポールは重傷、メリーは瓦礫の下で息を引き取った▼戦場取材報道に全てを捧げた女性、メリー・コルヴィン、2012年2月22日殉職。56歳。メモをとるメリーに「紙に書くだけでなく、子供が死んでいることを伝えて」赤ん坊を抱く母親の言葉が突き刺さった。メリーが死んで10年、世界で紛争は絶えない。報道は現状を変える力があるのか。そう問うたメリーに私たちはどう答える? 怒り、悲しみ、困惑、名状し難い感情が混在して沸き起こってくる。ロザムンド・パイクのキャリアにおける最高の1本となろう。

 

 

あなたにオススメ