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特集「最高のビッチ」

2022年7月28日

特集「最高のビッチ16」⑪ ジョーン・クロフォード
突然の恐怖(1953年 犯罪映画)

監督 デヴィッド・ミラー
出演 ジョーン・クロフォード/ジャック・パランス/グロリア・グレアム

シネマ365日 No.4006

名優3人、サスペンスの佳品

特集「最高のビッチ16」⑩

ブロードウェイでヒットを飛ばす人気脚本家にして、父親の莫大な遺産を相続する大富豪マイラ(ジョーン・クロフォード)。レスター(ジャック・パランス)は彼女演出の舞台で主役に抜擢されるも、リハーサルで彼の演技を見たマイラは降板を命じる。理由。「顔が気に入らない」。監督もプロデューサーも(今さら…)でも女王さまだから仕方ない。「彼が童謡を歌っても恋の歌に聞こえるような甘いマクスが必要。ステージに上がった途端、全ての女が見とれるような」。レスターは憤然。ジャック・パランスは突き出た頬骨、とんがってしゃくれた顎、窪んだ目に鋭い眼光。どこから見ても甘い顔ではない。このふたりはサンフランシスコ行きの列車に乗り合わせ、シェイクスピアのセリフを交換し、文学と詩を語り、マイラにとってなくてはならぬ男性となり、結婚した▼マイラとレスターは結婚披露パーティーを開く。その席でレスターは元情婦、アイリーン(グロリア・グレアム)に再会する。マイラとレスターの結婚記事を新聞で知ったアイリーンはマイラの顧問弁護士カーニーの弟ジュニアに接近、コネを作ってパーティーに来たのだ。カーニーが作成したマイラ遺言書は「マイラの死後、レスターが再婚するまで年金1万ドルを与える」だった。最愛の夫にそんなケチ臭いことできない、マイラは憤慨し「全財産を無条件に与える」の修正案を録音機に吹き込んだが、途中でスイッチを切るのを忘れたままディナー・パーティーに行った。翌朝マイラが再生すると「やさしい夫の役もウンザリだ。彼女といるとイライラする。本性を表したくなる。愛などない。茶番だ」「こんなところでダメよ」「もう一度。ずっと君を抱いていたい」「彼女の身に何か起こったら財産はあなたのもの」だからマイラには「事故で死んでもらおう」と結論する。マイラは恐怖に目を見開く▼むざむざ殺されてなるものか。証拠の録音レコードを不如意にも割ってしまったが、マイラは冷静にレスターとアイリーンの殺人計画スケジュールを立てる。ふたりの筆跡を真似てニセメモを書き、それぞれのポケットに忍ばせる。決行の夜。白いスカーフ、黒いドレスでアイリーンに変装したマイラは、あらかじめ作っておいた合鍵でアイリーンの家に侵入し、拳銃を盗んだ。ニセメモで誘い出したレスターが来るのを待つ。彼を射殺し、直後に到着するはずになっているアイリーンは死体の第一発見者であり、容疑者になるはずだ。そこまでは頭の中で組み立てた。しかしクローゼットに隠れていざ発砲しようとしながらマイラはためらい、レスターの隙を見て部屋を走り出る。拳銃は落としてしまった。レスターは逃げ去るマイラを見てはめられたことに気づき、車で追う。アイリーンも待っていたレスターが来ないので街に出た。黒コートと白いスカーフの女をマイラと間違え、レスターは轢き殺そうとする。「彼女はアイリーンよ」とマイラは叫ぶが、アイリーンは轢死、レスターは車を横転させた。物陰から様子を見ているマイラに、物音を聞いて飛び出してきた住人の会話が聞こえた。「ひどいものだな、男は死んでいる」。マイラの顔にかすかに微笑が浮かんだ(気がする)▼驚くべきマイラの変貌。恐怖におののく女から返り討ちを決意する復讐の女へ。アップになったクロフォードの顔は獣性を帯びる。孤を描く濃い太い男眉、サーチライトのように光る大きな目。ひき結んだ唇。強固な意志を示す強い顎。女優の顔面力と言わずなんと言おう。この映画はジャック・パランスとジョーン・クロフォードの顔の勝負だと言ってもいい。ジョーン・クロフォードは本作で3度目のアカデミー賞主演女優賞に、ジャック・パランスは助演男優賞にノミネートされた。グロリア・グレアムも好演だ。1940〜50年代に全盛を迎え「悪人と美女」でアカデミー賞助演女優賞受賞。57歳という道半ばで亡くなったが、ガンであることを明かさず、映画スターとして美しく去ろうとした女優の散り際は「リヴァプール最後の恋」として映画化されている。名優3人がやってのけたサスペンスの佳品。

 

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