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特集「最高のビッチ」

2022年7月30日

特集「最高のビッチ16」⑬ エレノア・パーカー2
女囚の掟(下)(1950年 劇場未公開)

監督 ジョン・クロムウェル
出演 エレノア・パーカー/アグネス・ムーアヘッド/ホープ・エマーソン

シネマ365日 No.4008

自己責任で生きる

特集「最高のビッチ16」⑩

マリーは8ヵ月で早産した。赤ん坊の引き取り手はいない。実の母親は再婚した夫が反対だからと断った。子供を引き離され希望を失ったマリーは、せっかくの仮釈放審査にしどろもどろの対応をして不合格。そこへ裏社会のボスの情婦、パウエルが入所した。娑婆ではキティの天敵だった。ハーパーにたっぷり金を掴ませたパウエルはたちまちボスの座に君臨する。マリーに目をつけ就職の斡旋をするが(彼女らは新入りを引き込むとトクでもあるのだろうか)、「キティもあんたもお断り」。マリーは以前のようにおずおずとではなくキッパリと拒否する▼クリスマスが来た。パウエルは女囚たちに口紅をプレゼントする。マリーのそれは豪華な装飾がついていた。マリーは返しに行く。「模造ダイヤでしょ」「あんたの気が変われば本物をやるよ」。マリーが塀の下に隠れていた子猫を拾った。女囚たちは食事のミルクを掠めて子猫に与える。点呼だ。子猫の鳴き声を聞きつけたハーパーが猫を抱くマリーにつかみかかった。女囚たちはハーパーを引き倒しベッドを逆さまに、電灯を割り暴動となった。所長が止めにきた。マリーは3日間独房に。ハーパーの意趣返しはそれですまなかった。腕ずくでマリーを坊主頭にしたのだ。まだある。新聞社にたれ込み「看守が悪質な刑務所を告発」とガセネタを書かせた。頭にきた所長はハーパーの解雇を理事会に要求した。男たちは関わりたくない。どころか「君に辞職してもらわねば」。どっちの味方だ。所長も黙っていない。「辞職の強要を州の聴聞会に訴えます」。これには参ったらしいが、ハーパーの解雇も沙汰止みとなった▼独房から出てきたマリーの頭を見た女囚らは騒然、そして沈黙。金属を叩く音が部屋中に響く。やってきたハーパーが睨みつけるがやまない。後ずさりして退散した。食事の時間だ。ハーパーが見回る。力なくコップを落としたキティをハーパーが嘲笑った。彼女が背を向けたとき、キティはフォークでハーパーの首を刺した。マリーが叫ぶ「殺すのよ、殺してしまえばいい」。以前のマリーとは人が変わっていた。ハーパーの死体に目もくれず、マリーは衰えたキティの手をとって食堂を出た。キティは死刑求刑となった。所長は免除嘆願に奔走する。マリーに仮釈放が決まった。女囚たちは祝福し「ぐずぐずしないでパウエルに(就活を)頼みな」と尻を叩く。だが老女囚は言った。「この女たちの無駄話に聞く耳を持つな。まともな仕事につきな。いい男を見つけて子供を産みな。少しのことぐらい我慢できるさ」。素人の奥さんらが見学に来た。「彼女らは何の罪で?」と看守に聞き「女性の恥だわ」と吐き捨て去った。彼女らの後ろ姿を見ていたマリーはツカツカとパウエルの元にいき、ルージュを取ると思い切り派手に唇を染めた。それが答えだった。マリーは裏社会で生きると決めたのである▼マリーの出所日だ。所長室にいる。「保護司が見つけた仕事なら真っ当に働いて自尊心を保てるわ」。マリー「それに何の意味が?  所長はベストを尽くした。でも何が変わった?」「助けが必要なら言って」「ありがとう。でもけっこう」。背を向けた。窓から所長が刑務所の門を出るマリーを見ている。男が3人迎えに来た。マリーを後部座席に座らせ両側に男が座る。「彼女のファイルは?」確認にきた担当者に「そのままにしておいて。戻ってくるわ」。マリーの行く末が哀れか。そうだろうか。救いのない映画にも思えるが、所長が初めてマリーを面接した時の言葉通り「ここにくる理由はさまざま。でも原因はひとつ、自分が作ったからよ」▼子猫のようにおどおどしていたマリーが邪悪なまでに自信にあふれ、毒食らわば皿までと開き直ったこれからの人生。監督がジョン・クロムウェル。そう「痴人の愛」でベティ・デイビスの転機を作った監督だ。堕していく女を弱い薄幸の女にせず、それもまた彼女の選択なのだと、自己責任で生きる女に作り替えた監督。エレノア・パーカーは本作でヴェネツィア国際映画賞女優賞。アカデミー主演女優賞にも本作を含め3回ノミネートしたが受賞に至らず、ノミネート6度のデボラ・カー、8度のグレン・クローズと共に、大いなる残念組として語られる。もうひとつ、悪看守ハーパーに扮したホープ・エマーソンは、本作でアカデミー賞助演女優賞候補となりました。あっぱれ。

 

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