女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

令和4年8月のベストコレクション

2022年8月2日

特集「令和4年8月のベストコレクション」②
ロイヤル・ナイト英国王女の秘密の外出(下) (2016年 事実に基づく映画)

監督 ジュリアン・ジャロルド
出演 サラ・ガドン/ベル・パウリー/ジャック・レイナー/ルパート・エヴェレット/エミリー・ワトソン

シネマ365日 No.4011

来るべき女王の時代

午前0時、ラジオが実況する父王のスピーチをリリベットは喧騒のパブで聞くことになる。「陛下の放送だぞ」。誰かの声でパブは静かになった。開戦を国民に告げる「英国王のスピーチ」と対をなす終戦のスピーチだ。リリベットはバッキンガム宮殿で何度も練習を繰り返していた父を見ている。吃音が心配だった。ゆっくりとラジオから父の声が流れた。「私たちの心や家族から戦争の暗雲が過ぎ去った今こそ、欧州の平和がもたらした世界における新たな課題を考えましょう。勝利を導かれた全能の神に感謝いたします。かたわらにいる家族と共に、荒廃すれど決して怯まず、動じなかった帝国最古の都から国民に呼びかけます。無慈悲な敵に倒された戦没者のことを心に刻みましょう」▼ジャックが叫んだ。「今さら、かよ!」。リリベットが色をなし「無礼よ!」パブの客たちは「お前は自分の国王を罵るのか」。ジャックは叩き出された。リリベットが追い「国王はすごく頑張って心のこもった演説をしたわ」「ムカつく話だ。下劣で苦しい戦いを美化する言葉だ」「国王と祖国をみんな支持していたわ」「終戦で国に戻ったら、何もしていない奴らが上品な声で話していた」「私のような声?」「そうだ」「言わせてもらいますけど、私の一家は戦争に奉仕したわ」「どうせパン作りか」「母はサンドイッチを作ったわ。私は女子国防隊機関輸送隊の准大尉よ」「将校さんか」「私はリジー」「俺はジャック。家は裕福か」「なんとかね」「妹は迷子かい」「トラファルガーに連れて行って」「ここだよ。じゃあな」。押し合いへし合い、ジャックとリリベットは人混みに押されバッキンガム宮殿の前に出た。バルコニーに姿を現した国王夫妻に歓喜の声が上がる。「ちょっと、手を降ったらどう? 終戦への感謝を込めて」隣の女性がリリベットに催促した。「本心?」「微妙だね」。誰か亡くなったのだとリリベットは察する。国旗を打ちふる民衆、祈りを捧げる年配の夫婦、踊り出す若い男女。キスしているのは、まあジャック…。「失礼、人の彼氏にキスなさるの?」女性は笑い「じゃ、お返しするわ。他にも男はいるから」。「どこまでも邪魔するのだな」苦笑いのジャックに「あなたが頼りなの。妹を探して。そしたらお酒を付き合うわ」。たどり着いたのがソーホーだ。アヘン窟、売春宿、殺人、暴行の温床。ヤク入りカクテルで目が回ったマーガレットはカジノの帳場に迷い込んだ。「見慣れん顔だな。名前は」「P2よ」。親父たちキョトン。「プリンセス2。マーガレットよ。チェルシー兵舎に行けるかしら。パーティーがあるの。合言葉を知っているわ」。「それは、それは。殿下。ぜひうちの女性たちも一緒に」。マーガレットは娼婦たちと打ち揃い兵舎に繰り出した。「この商売は長いのかい?」車の中で娼婦が訊く。「初めてよ」「そうだと思った」「名前は」「マーガレット」「本名は」「一緒よ」「いい度胸だね」▼尋ね、尋ねてジャックとリリベットも兵舎に。無断で隊を離脱したジャックは憲兵に追われていた。見つかって羽交い締めにされた。「その人を離しなさい!」誰だ、こいつは。 振り向いた憲兵たちに「私はエリザベス王女」。潮が引くように目の前に空間ができ、客も兵士も整列。「殿下に敬礼」。姉妹は無事対面する。「もう1秒も離れません」密着する護衛にジャックの家に連れて行くよう命じる。車を降りたらマーガレットは泥酔。リリベットは手押し車に妹を積み込み、貧しい家に着いた。母親は深夜にもかかわらず温かく息子とその客を迎え、マーガレットに風呂まで使わせた。客間には国王家族の写真が飾ってあった。自分も写っている。母親が「王位を継ぎたくて継いだンじゃないだろうけど、頑張っているよ」「そうですよね」リリベットは深く嬉しかった▼バッキンガム宮殿。「パパ、ママ、遅くなりました。友人のジャックです。一緒に朝食を」。ぎごちなく国王一家とテーブルに着いたジャックが「演説を聞きました。パブで。みな喜んでいました」「娘とはどこで」「14番のバスよ。彼と出会えて幸運だった。お金も借りているの」「君のおかげで娘は無事戻ったようだね。だがリリベット、このことは公言せぬように。10時にフランス大使が来る。同席しなさい」「はい」。キッパリした娘の返事に、一夜にして成長したように父王は思う。ジャックは点呼に間に合うか。間に合わなければ脱走兵だ。軍服に着替えたリリベットはノーソルト空軍基地にジープを飛ばした。傭兵に「ウィンザー准大尉」と名乗り無許可外出を不問にさせる。エリザベスは晴れやかに微笑み宮殿に戻る▼主役ではありませんがこの人がよかった。国王役のルパート・エヴェレットです。祝賀の完成を宮殿で聞きながら王妃にいう。「終戦したがしばらく混乱が続くな。国民は戦後という厳しい現実に目覚めるだろう。リリベットの時代に」。国家を担う娘への気遣い、それもありますが、来るべき将来を見ている国王の目が沈思でした。演ずるルパート・エルヴェット。イギリス上流階級に生まれ「アナザー・カントリー」「理想の結婚」「聖トリニアンズ女学院」「ヒステリア」など幅広い芸域を持つ。ケンブリッジ5人組の外交官・ドナルド・マクリーンは大叔父です。

 

あなたにオススメ