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令和4年8月のベストコレクション

2022年8月4日

特集「令和4年8月のベストコレクション」④
ナイトメア・アリー(下)(2022年 ダーク・ファンタジー映画)

監督 ギレルモ・デル・トロ
出演 ブラッドリー・クーパー/ケイト・ブランシェット/ルーニー・マーラ/トニ・コレット

シネマ365日 No.4013

女は怖いですな

リリスがカウンセラーとして患者から入手した情報をスタンに与え、彼が相手の知りたい「死者のその後」を伝え、霊能者として満足させる共犯関係が成り立ちます。患者の秘密をばらすなど、医師の倫理にもとる悪役を、ケイト・ブランシェットがあざといまでに演じます。キンブル判事には23歳で戦死した息子がいた。判事夫人は息子の死後の様子が知りたがった。スタンは目を閉じ、夫人の手を握り「感じます。息子さんはここに来ています。きっと会えるとあなたに話しかけています」。罪なことを言ったものだ。息子に会うには死ねばいいのだと、夫人は先に夫を、次に自分を拳銃で撃ち、無理心中するのである。リリスが次に持ってきた話は大富豪のエズラだった。短い間彼女の患者だった極度に内面的な権力者。過去に数人の女性を虐待し、リリスも胸にも傷が残っている。妻は流産で死んだ。彼の要求は妻に会うことだ。セッションに1万ドル出そう。途方もない金額だが…入手した資料から妻がモリーに似ているとわかったスタンは、モリーに幽霊の替え玉をやらせる▼夕暮れ、遠くに仄白く浮かんだ妻の似姿に感極まったエズラは抱きしめてしまった。モリーはパニックに、怒り狂ったエズラはスタンを襲撃するが逆に殴られ卒倒する。忠実なボディガードが逃走するスタンの車を阻止するが、彼は轢き殺す。スタンのやり方にとことん愛想を尽かし、モリーは去る。スタンはリリスのオフィスに駆け込んだ。今まで稼いだ金が金庫に「全部あるわ。持っていって」気前よく札束のぎっしり詰まったトランクを与える。中を改めると上だけが50ドル札、あとは1ドルではないか。「金を横取りしたな」「そういう妄想があなたの問題ですわ」怒り狂うスタンに「あなたには失望したわ。私にとってお金はどうでもいい。でもあなたには全て。ケチなつまらない男よ。あなたに人は騙せない。相手が勝手に騙される。あなたはオクラホマ生まれのただの田舎者よ。私をものにできるとでも? 洞察力がないのね」リリスは拳銃を取り出しスタンを撃ち「私にみなぎる力を感じる?」感じたくないね。警備員が突入し、スタンは窓から逃亡した▼2年後、酒に溺れ、流れ流れてスタンはカーニバルに来た。座長「読心術? 古すぎる。新しいものでないと客は喜ばん。仕事をやろう。温かい食べ物と乾いた寝床と、酒もやろう。どうだ、本物が見つかるまで一時的なものだが、獣人をやらんか」それはかつてクレムが獣人を飼い殺しにするための誘い文句だった。スタンの目がなぜか煌く。「やります。それが俺の宿命だから」。宿命? 彼には寝たきりの父親を凍死させた殺人歴があります。虐待を受けていた腹いせです。遺体は家ごと燃やした。犯行の自己罰を「宿命」として受け止めた? 後の彼の自信満々のイカサマぶりを見る限り、そうは見えないのですけどね。因果はめぐる。自分のしたことが全部自分に返ってきたってことでしょうか。ホームレスたちがたむろしている焚き火にあたろうとして、新聞の見出しを見たスタンはリリスとエズラが結婚したって記事を見た(ように思うのだけど)。一人勝ちしたのはリリスで、使われていたのはスタンだ。「刑事コロンボ」じゃないけど、言いたくなるわね「女は怖いですな」。ケイト・ブランシェットの悪役がさえていた。150分の長い尺で、ギレルモ・デル・トロ監督の丁寧な作り込みに満足するが、意表をつく「パンズ・ラビリンス」や、哀切の解答を出した「永遠のこどもたち」(製作総指揮)、近親相姦、情念のせめぎ合う「クリムゾン・ピーク」などに比べたら、トロは最近エッジが鈍くなっているのではないですか。「シェイプ・オブ・ウォーター」は確かにアカデミー賞の「作品・監督・美術・作曲」を受賞した。それでもトロ作品にしたら、もっと「愛の痛み」があってほしかった。欲でしょうか。

 

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