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令和4年8月のベストコレクション

2022年8月5日

特集「令和4年8月のベストコレクション」⑤
ワイルドライフ(上)(2019年家族映画)

監督 ポール・ジュノ

出演 キャリー・マリガン/ジェイク・ギレンホール/エド・オクセンボールド/ビル・キャンプ

シネマ365日 No.4014

思慮深い息子

14歳の少年がこじれて歪んでしまった家族の在り方を通して、成長していく話。スーパーヒーローもヒロインもいない、静かな作品が透き通ったハーモニーを奏でます。裕福とは言えないまでも睦まじく暮らしていた3人家族。父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)、母ジャネット(キャリー・マリガン)、息子ジョー(エド・オクセンボールド)の暮らしは父の解雇とともに揺らぎ始める。ゴルフ場の支配人からクビを言い渡されたのだ。妻は「あなたのような人を手放すなんて」とあくまで夫の味方だ。息子が「パパは大丈夫?」と心配しても「失業のたびに次の仕事を見つけてきたわ」と太鼓判を押す。はたから見ていたらジェニーは危なっかしい夫です。過去に数回転職し、その度一家は北へ、北へ引っ越し(多分家賃の安い町へ)。今はカナダと国境を接するモンタナの片田舎だ。解雇の理由も職場が禁止しているゴルフ客との賭け事をしていたからだ。支配人は行き過ぎたと思ってか、すぐ復職を打診するがジェリーは断る。プライドのためだと妻は息子に説明するが、何をしても長続きしない夫なので、再び家計の赤信号はありあり。同情するわ▼妻はパートで水泳教室のインストラクターを、息子は写真館でバイトすることを決めた。よくできた妻と孝行息子だ。収入のない旦那は居心地が悪い。酒を飲んで「俺を追い詰めるな」とか怒鳴り、見つけてきたのは現在も火が止まらない山林火災の消火作業だ。冬になって雪が降るまで帰ってこられない。時給1ドル。バカなことやめて。妻は必死で止めるが、夫は出ていく。何かやらねば、という責任感はわかりますが「死ぬかもしれない危険な仕事を無報酬に近いペイで」。近所に知り合いもいない、引っ越したばかりの土地で放り出された。妻にしたら捨てられたのと同じよ。息子はハラハラしながら見ています。彼は思慮深い子で、軽々しく両親のどっちの肩も持ちません。父か母のどっちがいい、悪い、の問題じゃないことが本能的にわかっている。家庭という狭いエリアを、とめどなく侵食する複雑な、正体のわからない感情の食い違いを、彼は経験していくことになります▼最初の兆候が母親の変化でした。水泳教室で知り合った初老の男性ウォーレン(ビル・キャンプ)は地元で名の通った自動車販売会社のオーナー。妻とは離婚、目下独身。ジャネットは夫との生活で得られなかった安定感と寛大な扱いにほぐされ、距離を縮めます。息子は不安を隠せない。ウォーレンが嫌いなのではない、少年から見ても彼は頼り甲斐のある大人だ。息子が不安を覚えるのは男ではなく母親なのだ。いつも家にいて息子の帰りを待ち、機知のある会話、美味しい料理、父親を決して悪く言わない心遣い、それがどうだろう。すぐメソメソ泣く、愚痴っぽい。家は陰気になり、息子は缶詰を開けて夕食をすませるようになった。母親はウォーレンと出歩く。彼の家にも呼ばれ、馴れ馴れしくダンスし、酒を飲み抱き合って「運転は危ない、泊まっていくといい」という勧めを「僕が運転します」と断って、母親を連れて帰ったのが息子だ。

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