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令和4年8月のベストコレクション

2022年8月6日

特集「令和4年8月のベストコレクション」⑥
ワイルドライフ(下)(2019年家族映画)

監督 ポール・ジュノ

出演 キャリー・マリガン/ジェイク・ギレンホール/エド・オクセンボールド/ビル・キャンプ

シネマ365日 No.4015

愛を呼び返す日

待ち侘びていた父親が帰ってきた。「いい知らせだ」と笑顔を見せる。「森林局の仕事が決まった。ロッキー山脈の東だ。家も用意してくれる」。ジャネットの味方をするのではありませんが、どうしてこの夫は妻の気持ちがわからないのだろう。「また引っ越し?」妻は無表情に言う。「私からも知らせることがあるの。アパートを借りたの。自分用に」「男ができたのか」ジャネットはあっさりウォーレンとの不倫を打ち明け「でもそれとこれは無関係」と言います。不倫などで解決できなくなっていた妻の孤独が、夫にはわかりません。怒り狂った夫はウォーレン宅に走り、灯油をまいて放火する。転がり出てきたのはウォーレンと見知らぬ女性だ。「女房は!」と聞く夫に「知るか!」。男にしたらジャネットはその程度の相手だったのね。乱闘になった父とウォーレンのそばを黙って去ったジョーは警察に行く。父がそのうちしょっ引かれてくるのを待っていたが来なかった。家に帰ると、どこに行ったかわからぬ息子の行方に、居ても立ってもおれぬ父と母が手放しで迎えた。ウォーレンとは示談ですんだ、心配しなくていいと父と母。自分に注がれる配慮にジョーは落ち着き、寝室に引き揚げた。夜が静かに更けていった▼2年後。ジャネットはオレゴンで教職に就いていた。久しぶりに週末家に帰ってくる。ジョーが長距離バス発着所まで迎えにいく。ジェリーはセールスの仕事が順調だった。「そのうち君に仕送りもできる。ジョーがまた優等生名簿に載った」と嬉しそうに報告する。ジョーは写真館のバイトを続けていた。撮影を任されるようになった。現像もできる。「明日、写真館に来て」と両親に頼んだ。スタジオに椅子が3脚セットしてある。「父さんはここ。母さんはこっち。真ん中が僕。3人で撮りたい」「髪もセットしていないわ」「いいよ。(写真を)見るのは僕だけだから。撮るよ。1・2・3」。ジャネットがかすかに微笑んだ▼ポール・ジュノ監督は教訓を持ち込まず、善悪を廃し、穏やかな日常の中で変化を受け止め、家族の安寧を見出そうと心砕く少年の眼差しを我慢強く追いました。夫婦がどうなるのか映画には示されていません。わかっているのはジョーがこれから何度も、自分が写した写真を見返す日が来るだろうこと。「自分にもこんな幸せな日があったのだ」かもしれないし、「こんな幸せな日があったのだから、元気を出さなくちゃ」かもしれないし、「これが父さんと、お前たちのおじいちゃんとおばあちゃんの若い時だよ」かもしれない。疑いがないのは彼がこの一葉の写真を見るたび、当時はわからなかった愛を呼び返せることだ。心やさしい写真館の主人がいみじくも言った。「幸せな瞬間を永遠に残そうと人は写真を撮る。私たちはそのお手伝いをするのだよ」

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