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特集「ディーバ(大女優)」

2012年6月5日

特集 ディーバ(大女優) 悪女の元祖 ベティ・デイビス 偽りの花園 (1954年 舞台劇映画)

監督 ウィリアム・ワイラー
出演 ベティ・デイビス/ハーバート・マーシャル/テレサ・ライト

デイビスは進化する 

 夫と子供に尽くすのが女の美徳であった、そういう時代に、家族に棄てられるというのは女にとって、社会的にも道義的にも最大のペナルティであったにちがいない。原作はリリアン・ヘルマンの「子狐」だ。ヘルマンとウィリアム・ワイラーの映画にはこのあとにも「噂の二人」がある。子狐とはぶどう園を食い荒らすキツネのことで、旧約聖書はソロモンの雅歌に由来する。映画の冒頭こうある「いたずらな子狐をとらえよ。実ったぶどう園を守るために。子狐はどこにでもいる。ときは1900年、アメリカ南部に暮らす狐一家の話である」ヒロインの富豪銀行家夫人レジーナ(ベティ・デイビス)は今回どうやら狐の役らしいのです▼レジーナの兄ベンとオスカーは金のためならなんでもする俗物だ。南部の黒人を安い賃金で働かせ、綿工場を建てようと企み、妹レジーナを抱き込んで資金7万5000ドルを出資させようとする。レジーナも乗り気だ。オスカーは財産目当てにレジーナの一人娘アレクサンドラ(テレサ・ライト)と息子のリオを結婚させようと企んでいるが、アレクサンドラには新聞記者の恋人がいる。レジーナの夫ホレイス(ハーバート・マーシャル)は心臓疾患でボルティモアに療養中だ。レジーナは見舞いに行ったこともないが、このたびは夫に出資させねばならないので、娘アレクサンドラに父を連れて帰るようにたのむ▼リオは叔父ホレイスの銀行に勤務している。ホレイスの債権9万ドルが手つかずのまま金庫に忘れられていることを知り、父オスカーに知らせる。オスカーはリオに9万ドルのなかから7万5000ドルを盗ませる。ある日遺言状を書き換えるため銀行の金庫をあけたホレイスは、債権の盗難を知り妻とその兄弟の悪巧みを察知、全財産を娘にのみ譲ると遺言状を書き変える。ホレイスは発作を起こして倒れるがレジーナはうちすて冷たくみおろし、テキトーなところでわざとらしく大声をあげ、人を呼び医者も呼んだがホレイスは死ぬ。レジーナは兄たちが債券を盗んだと非難して脅し、自分だけ暴利をむさぼる。アレクサンドラは強欲な母親に愛想をつかし、家を出て恋人と新生活にふみだす▼果てしない欲望にわれと我が身を滅ぼしたレジーナはひとり屋敷に取り残され、さびしく去っていく娘たちの後ろ姿を雨の降る窓辺で見送る。金は得たが家族に棄てられた、というわけ。いまならもっとデイビスに似合った物語ができるのでは…やれやれこれで正義をふりまわすうるさい娘はどっかへいった、駆け落ち同然だから結婚式の費用も浮く。相手はプータローではなく定収入があるから、当分は金の無心に来ないだろう。事業契約に落ち度がないか弁護士に確かめよう。兄弟たちは巻き返しにでてくると思うが、ホホホ。蛇の道は蛇、あの連中の考えそうなことはわたしにはお見通しなの▼のちに、ぶどう園を徹底的に食いつくすところまで行く女。それが「何がジェーンに起こったか」のジェーンだったと思います。デイビス扮するもと子役の王女様は、ぶどう園をむさぼり喰っていたが凋落し、最後まで食い損なってしまった。しかしそれでおさまる子狐ではない、幸せになるやつはだれであろうと勘弁できぬ、ベティ・デイビスはそんな悪相をみなぎらせ姉をいびり殺します。それに比べたら、窓辺ではかなげな視線を投げるデイビスは可愛いくらいですね。全然似あっていない盛り上がったシュークリームみたいなへアスタイルを笑わば笑え。悪女デイビスは時代とともに進化する。お楽しみはこれからなのだ。