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シネマ365日

2013年4月17日

迷子の大人たち (1992年 家族映画)

監督 ビーバン・キドロン
出演 シャーリー・マクレーン/マルチェロ・マストロヤンニ/キャシー・ベイツ/ジェシカ・タンディ/マーシャ・ゲイ・ハーデン/シルヴィア・シドニー

 監督のビーバン・キドロンは31歳だった。彼女がどういう人かというと「迷子の大人たち」のあと「ブリジッド・ジョーンズの日記 切れそうな私の12カ月」「3人のエンジェル」を撮るイギリス出身の女性監督だ。「迷子の大人たち」は佳品だ。ハートフルな温かさがよく伝わるのがいいが、すごい出演者をうまく噛みあわせたと思うのだ。4人のオスカー女優に映画界の生き字引のような女優、そこへM・Mことマルチェロ・マストロヤンニだ。これだけの出演者で駄作になるほうがおかしいと思うかもしれないが、そんなことはない。有名スターばかりでくだらない映画を撮った例はいっぱいあります。やっぱり監督の力量ですよ▼まずM・M。23年前友人夫婦の仲を取り持ったのが縁で、窓の外からみたパール(シャーリー・マクレーン)に「美の亡霊をただよわせている女」を感じ、妻ある身で愛してしまった。以来片思いを貫き、友人を失って未亡人となったパールを訪ね、葬儀が終わった(日本でいう精進落としの席か)パーティーに姿を現す。このときドアを開けて入ってきたM・Mをみてほしい。役者というのはこういうものかと思わずにはおれないだろう。彼は68歳だった。23年間好きで、好きでたまらなかった女に今こそ結婚を申し込む(彼は妻を亡くしている)。人生の酸いも甘いも知り尽くした熟年男性の落ち着き。自信と温かみを控えめに、しかし全身からあふれさせている▼夫を亡くしたばかりなのにプロポーズは強引すぎるというパールに「僕に幸せを与えてくれ。料理を作らせてくれ」と頼む。「それがなにか大事なことなの?」「イタリア人にとってはね。アイルランド人いわく、喰うことへの愛にまさる愛はない」「あの粗食人種が?」「君の一家を食事に招待したい。いいだろ?」M・Mが台所からテーブルに運びこむ壮大なイタリア料理、圧巻でしたよ▼パールの娘ビビがキャシー・ベイツ。太っている、体臭が臭うと子供のころ母親からいわれグサグサに傷つく。自分は愛されていない娘だと思い込んだまま成人し、結婚したがうまくいかず子供ふたりをかかえ離婚。カリフォルニアに移住を決意する。もうひとりノーマ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は息子を失ったショックから立ち直れず、スクリーンの中のマリリン・モンローやオードリー・へプバーンに逃避「そっくりさん」に扮装して現実を韜晦する。彼女の息子はスーパーマンに自己投入するあまり空を飛べると信じ、ビルから身を投げる寸前M・Mが助ける。息子が面談に通う精神科医がじつはニセ医者だと知ったノーマは母親に立ち返り「うちの子に精神分析は必要ないわ。あの子は頭のいいしっかりした子よ。他の子より想像力が豊かなだけなの。アンタの汚い手で息子の脳をかき回さないで」ホテルの一室にニセ医者をおびきよせ、拷問のあげくさんざんおどしつけてひきあげる▼ビビは移住の直前、母親へのうっぷんを存分にぶつけるがパールも黙っていない「お前が離婚するときわたしが助けなかったとでも? お前と子供たちを引き取った。子供だったお前に母親の務めを怠ったことがある? 世の中の不況、戦争、いろいろ大変な時代だった。女が自分に目覚める前の時代よ。女が自分の生き方をあれこれ問う時代ではなかった。あの頃の女は何も得ず与えるだけ。目隠しされた人生を生きてきた。自分の人生を無駄にしていることを知らずに! そのことを考えるとこの建物とこの町を吹き飛ばすほどの怒りで煮えくり返るわ」三人が三人ともエネルギッシュである。そこへだ、三人の統帥のようなパールの姑のフリーダ(ジェシカ・タンディ)がいる。幼馴染である女友だちのベッキー(シルビア・シドニー)が入るという老人ホームに見学にいく。無機質で機械的な措置にフリーダは怖気をふるい、こんなところで死なせるなんてとんでもないと一大決心をする。「ベッキー。あなた私とフロリダへ行くのよ」「なにしに?」「そこで住むのよ。快適よ。暖かいしいい施設があるの。私たちは72年のつきあいよ。わたしは親友と最後のときをすごしたいの」M・Mもパールも、ビビもノーマもフリーダも強引ではあるものの、その強引さは相手の幸福をしっかり視野にいれたうえであり、てきぱきと断行するがつらいことも面白くないことも、いやというほど経てきた人生経験が、彼らの決断や強引さを背骨のあるものにしている。パールとM・Mの結婚パーティーにどちらもの家族がつめかける。牧師が渋滞で遅れているから近くにいたヒッピーを呼んで間にあわせたという結婚式でめでたくエンド。みてよかったと思える映画です。シャーリー・マクレーンとM・Mは本作でゴールデン・グローブ賞主演男女優賞にノミネートされました。

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