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シネマ365日

2014年2月9日

特集 離婚してせいせいした女 ニコール・キッドマン イノセント・ガーデン (2013年 ミステリー映画)

監督 パク・チャヌク
出演 ミア・ワシコウスカ/ニコール・キッドマン/マシュー・グード

殺人鬼の母 

 ニコール・キッドマンが脇にまわりました。キッドマンでなくてもいい役なのだけど映画はよかったです。パク・チャヌク監督は「オールド・ボーイ」で主人公が自分の舌をはさみで斬るときにジョリジョリという擬音まで入れた人。本作はパク監督のハリウッド・デビュー作です。今度はどんなショッキングなシーンを入れるのだろうと思っていたら、鮮血は飛び散ったものの「ジョリジョリ」的どぎつさはなかったばかりか、きれいな映像だったのでびっくり。本作は生まれながらの殺人鬼がヒロインです。キッドマンはヒロインの母。実母なのだけど娘インディ(ミア・ワシコウスカ)はひとつも母になつかない。母親に指でふれられるのも嫌う。母親もわが娘だと思えず溝は広がるばかり。折しも娘の18歳の誕生日に父親が死んだ。娘はパパっ子だ。いつもふたりだけで狩りに行き、部屋には動物の剥製が飾ってある。いうなれば父親と娘が密着し、のけものにされている母親をキッドマンが演じたわけ。46歳。母親役の年齢ですね▼ハリウッド女優の40代というと母親役になって脇を固めるか、性格俳優で助演に転じるか、昔ながらの選択肢が旧態依然としてはばをきかせているところは、映画界とは見た目よりずっと古い体質なのだ。そんなところで主役を選んでいくのは難しいとは思うけど、力のある女優が妥協してどうでもいい映画に出る必要はないと思うのよ。それでなくともキッドマンの仕事好きは一種の強迫観念にちがいない。彼女とカトリーヌ・ドヌーブがお産のとき以外諾々と休んでいるのを見たことがない。この映画の出演もその一種だと思えます。キッドマンらしいと思ったシーンはいくつかあります。殺されかけているシーンで必死に抵抗する。これまた殺人鬼を演じるマシュー・グードがベルトをキッドマンの首に巻いて絞め殺そうとし、殺人仲間であるミアを呼び「早く来て(殺すところを)見ろよ、早く見ろよ」と叫ぶ。キッドマンは転倒しながら床を跳ねまわって抵抗する。キッドマンの役柄は殺人鬼ふたりにはさまれた善良な嫁であり母なのですが、いかんせん、殺人鬼とはいえこんな暴れまくる女をよそ見しながら殺せるのだろうか、とつい思ってしまいました。それと娘と義理の弟が親密なスキンシップを交わす(男が女に靴を履かせる)シーンを母親がチラッとみた一瞬、すべてを察する視線の鋭さ。キッドマンの三白眼が決まっていました▼粗筋ですがファーストシーンの「花は自分の色を選ぶことができない。人は自分を選ぶことができない」というヒロインの独白は、ラストまで覚えておかれるといいと思います。最後のシーンでその意味がわかります。こわいですけどね。耳と目が異常に発達しているインディは18歳の誕生日、父親からのプレゼントの箱に鍵がひとつ入っているのを見る。父親は孤独好きな娘のよき理解者で早くから娘に狩りを教えた。美しい母イヴリン(ニコール・キッドマン)とはなにもわかりあえない。イヴリンも謎めいた娘の心のなかに入ることができない。父親の葬儀の日隣に座ってパタパタ扇で顔をあおぐ母の仕草が(葬儀なんか早く終わってくれない?)という無頓着を示す。その日やってきたのは父の弟というチャールズ(マシュー・グード)だった。外国暮らしが長く彼にあうのは母娘とも初めてだった。チャールズはストーカー家(これが原題)に当分泊まることになり、インディと友達になろうという。それからストーカー家に変わったことが起こり始める。まず長年勤めている家政婦が行方不明になった。インディの大叔母にあたる女性は、チャールズが寝泊まりしていることに「なぜここにいるの」と露骨な不審を現し、イヴリンになにか話したそうだったが機会がないまま失踪する。チャールズはインディをつけまわすと同時に母のイヴリンにも接近した。よく考えればいったい彼はどこから来て今までなにをしていたのか、ストーカー家のだれも知らないのだ▼ミア・ワシコウスカが心ここにあらず、といった、無感動な娘の雰囲気をよくだしました。彼女のアタマの中は(殺人したい)欲望で充満し、現実の日常社会が仮想空間のように思える。だからだれともしゃべらないし、友達もいない、そのくせ学業はトップである。彼女が最初に破綻をみせるのは叔父と母が抱き合っているところを目撃したときです。もちろん嫉妬なのですが母親が嫌いで叔父に惹かれていたはずの娘が、どうもそうではないのです。叔父がつぎの標的に選んだのはイヴリンで、彼女を殺しかけているところに現れたインディの手には猟銃が。ためらいもせず一発で叔父を射殺します。すごい腕です。結局彼女は叔父より母親を選び彼女を救ったわけです。叔父殺しはいきがけの駄賃みたいなものか。というのはこのあとインディは生まれ持った本性を露出させ、無差別殺人を予感させる行動にでて映画は不気味なエンドとなるのです▼叔父がいたところは外国ではなく精神病院でした。彼は幼いころ兄(インディの父)が下の弟ばかり可愛がるのに嫉妬し、弟を生き埋めにします。父はインディに弟と同じ「ストーカー家」に遺伝する殺人鬼の血を見抜き、幼いころから動物を狩猟することによって人を殺す血が騒ぐのを抑制していました。チャールズの退院を知って迎えにいった父は外国に追放しようとして殺された。チャールズはなにくわぬ顔でストーカー家に入り込み、自分と同じ血が流れているインディと「友達」になろうとする。パク監督らしい陰鬱さが満ち満ちた映画です。唯一救いはニコール・キッドマンの「善良な主婦」ぶりです。殺人鬼にむかって、娘には手をださないで、と弱々しく頼むところなんか、かなり痛いよね。似合わなかったけど。

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