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特集「やり返す女」

2014年9月11日

特集「やり返す女」リップスティック(1976年 サスペンス映画)

監督 ラモント・ジョンソン
出演 マーゴ・ヘミングウェイ/マリエル・ヘミングウェイ/アン・バンクロフト

復讐のライフル 

 スーパーモデルの姉クリス(マーゴ・ヘミングウェイ)と妹キャシー(マリエル・ヘミングウェイ)は、ふたりで自活している。クリスが22、23歳。キャシーが14歳だから姉は年の離れた妹の母親代わりのようなものだ。キャシーはクリスの仕事につきそって、ふたりはいつもいっしょにいた。カリフォルニアの海岸でセクシュアルな肉体でポーズをとる姉の撮影現場に、キャシーは学校の音楽の教師スチュアートを紹介しようと連れていく。スチュアートは自分の作曲した曲をきかせようとするが、スケジュールの詰まっているクリスは聞いている時間がない、他日自宅に訪ねていくというスチュアートに、承諾の返事をする▼この時代はいまのスーパーモデルとはずいぶん違ったのですね。両親を失った姉妹が同居して、姉が親代わりで面倒みているなんていいお姉さんだわ。それにずいぶん親切よ。スーパーモデルだもの、払ってもはらっても、雲霞のごとく男は言い寄ってきてくるだろうに、妹の学校の先生だからって、しょぼい男の来訪を(たとえしぶしぶでも)承知するなんて。でもやっぱりクリスは約束の日時を忘れて、彼がベルを鳴らしたときはシャワーを使っている最中だった。(だれよ、こんなときに)舌打ちしながらみるとあのセンセではないか。あわてて髪を拭きながら「まあごめんなさい、こんな格好で」。男は自分を忘れられていたことがまず気に食わない。作曲したという彼の音楽を聴いても普通のアタマではないとわかると思うのですけどね。そこへクリスの恋人から電話がかかってきてクリスは中座。ガン無視されたセンセ。オレをないがしろにするのもいいかげんにしろとますますむかつく。この映画約85分の短い尺でして、ほとんどはレイプをめぐる法廷シーンです。センセ側についた弁護士がやり手で、クリスより妹のキャシーに攻撃を絞る。なにしろ子供だもの、一生懸命姉を守ろうと健気に答弁するのだけど、やれセックスだ、強姦だ、姉は気持ちよさそうだったかとか、キャシーより陪審員に聞かせるための質問攻撃に「いくらなんでもひどすぎる」女性検事カーラ(アン・バンクロフト)が怒鳴りあげ、判事が「異議を認める」。でもそれまでに弁護側はちゃっかり陪審員の心証を有利にもっていきます▼センセは無罪。クリスは契約を失い、残っている最後の仕事に出かける日。これからどうするのと不安気に尋ねる妹に「姉妹で飢えるのよ」とリアルなことを言う。しかしまあ、それにしては「狩りにでもいってのんびりし、気持ちを整理しよう」と姉はライフルを車に積み込む。女性には珍しい、狩りなんて趣味が出てくるところは、やっぱりヘミングウェイ家の血ですかね。撮影現場にきて姉はスタジオへ、妹はそのへんを見学しておいでといわれ建物のなかをあちこちいくうち、なにかの発表会で音楽を受け持ったセンセがシンセサイザーを調節しているのに出会う。やさしい言葉をかけられ、キャシーはついふらふらとセンセのところへ▼このレイプ魔はキャシーをも暴行します。傷だらけになって、腕に倒れこんだ妹からすべてを察した姉はモノも言わず走りだす。どこへ? ライフルを取りに、ですよ。駐車場で車に乗り込むセンセを認めるや落ち着いて構える。付け焼き刃でなかなかできないきれいなポーズですよ。車は発進した。クリスはあわてない。脇を締め銃身を定めガンガンガン全弾みごとに命中させる。横転した車から、よろめきでてきた男にまだよ、まだまだ「これでも食らえ」と撃ちまくる。狩りに使うライフルですからね、ちょろいピストルの弾ではない。男は血煙をあげザクロのようになって倒れます。それでもなお射つのをやめようとしない姉に、憎しみがあふれています。エンドはやはり法廷。アン・バンクロフトが陪審員を叱りつけるような弁論を陳述しています。そらそうですね、センセを無罪にしたばかりに犯罪は連鎖したのですからね。映画全体の運びが駆け足みたいですが、着地点としてはじつにわかりやすい。これはもう多少法の解釈と運用が妙だろうとおかしかろうと、無罪にするほかないでしょうね▼カタストロフィはあったものの、内実姉妹ふたりともレイプという暗いストーリーは、今から思うとこの姉妹のその後を予兆させていたような気がします。マーゴ・ヘミングウェイは私生活で双極性障害を患い、二度の離婚を経験、アルコール依存症と薬物のオーバードースで死亡しました。自殺とみられます。祖父ヘミングウェイが猟銃自殺、彼の父親、妹、弟、姉が自殺。後年多くの親族を自殺で失くしたマリエル・ヘミングウェイは「わたしの家族のなかで自殺した人は全員、すくなくともなにかに依存していた。ドラッグやアルコールで自己治療しようとしていた。関係する原因は非常に複雑です」と分析し、サンフランシスコ郊外でヨガを教えながら心身を一如ととらえる、ホリスティックな生き方を選んでいます。