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特集「やり返す女」

2014年9月15日

特集「やり返す女」アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ1978 発情アニマル(1978年 サスペンス映画)

監督 メイル・ザルチ
出演 カミール・キートン

この映画をカルトにした名場面

 公開が1978年という時代のためもありますが、レイプシーンのすさまじさに、当時の感覚としては、ポルノ以外のなにものでもないとして「発情アニマル」という邦題がついた。今じゃレイプ・リベンジのカルト・ムーヴィーとなり「発情アニマル」は「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」と改題(「発情アニマル」が副題として残っているのは、なにか記念碑的意味合いでもあるのですかね)シリーズ化され「1」と「2」まで作られました。本作しか見ていないけどもう充分だわ(笑)。ヒロイン・ジェニファー(カミール・キートン)が一人また一人と加害者を血祭りにあげていくとき、追い詰められたリーダー格の男がいうのよ。「お前だって誘っていた、おれたちのいる前をナマ足で歩いた。おれのダチ公はシャツの隙間からおっぱいが見えたと言っている。気をそそるような歩き方だった、笑い方だった」よくある男の言い分ですね、女性が原告となり強姦を訴えたレイプ裁判では、被告側弁護士の使う手段でもある。本作の10年後に公開されたジョナサン・カプラン監督の「 告発の行方 」(1988)でも、ジョディ・フォスターを攻撃するのはこの手のオンパレードでした。いわく男をその気にさせた女が悪い…メイル・ザルチ監督についてあまり情報がないのですけどね。わりとセンスのいい人じゃないかと思います。撮った映画がとんでもない映画だったけど▼「どこが」というと、ジェニファーが小説を執筆するためニューヨークから人里離れた別荘に来る。宅配にきたマシューは垢抜けした大都会のキャリア・ウーマンに一目惚れして、チンピラ仲間に吹聴する。彼らは夜釣りしながら女のうわさ話にふけり、マシューが童貞であることをからかう。暗い湖畔の夜。エネルギーをもてあます、定職のない男たちの好奇の目、女は森の中の別荘に一人だけ。たわいない話題に移りながら男たちの関心が女から離れるどころか、ますます濃厚になっていく気配を、監督はじっとり描き出し、起こるべき事件がすぐ起こることを予知します。ところが監督は少しも焦らず、映画を煮詰めにかかります。ハンモックで午睡する水着姿のジェニファーを、遠目に見ながらモーターボートを乗り回す男たち、モーターが唸る回転音が近づいたり遠のいたり執拗に続く。生理的な嫌悪感を感じてジェニファーは家の中に入ってしまう▼繰り返されたレイプのあと、泥だらけ、血だらけになって横たわるヒロインの姿は痛々しい。陵辱し尽くして別荘をあとにした男たちは、このままにしておいたら自分たちがヤバイから女を殺してしまえと、いちばん気の弱いマシューに殺しを押し付ける。マシューは現場に戻るが失神しているジェニファーの血をナイフになすりつけただけで戻り、血のついたナイフをみせて始末したとうそをつく。生き延びたジェニファーは男たちの殺害を決意する。教会に生き、パイプオルガンの響くなか、床に膝をつき神の許しを乞う。思えばこの映画、うるさいバックミュージックもなく、長広舌のセリフもありません。ジェニファーは心のなかで復讐を誓いながら、日常生活はあくまで淡々としています。タイプライターに向かい小説を書き、物思いにふけり教会に行き、許してくれというだけです。カミール・キートンはバスター・キートンの孫。美人ではないかもしれませんが、骨の透けるような細い肢体がエロティックでした▼湖水の面にボートが一艘浮いている。緑の木々が影を落とす水辺には、物音ひとつしていないことが観客にはわかる。ジェニファーが復讐の幕を切って落とす、その瞬間が刻一刻と迫る。静寂によって緊張感を伝える。こういう密度の濃いシーンが監督のセンスをよく表していると思う。リベンジの手法は、本作よりえげつない映画はこのあといくらでも撮られているが、当時としては驚倒ものだったにちがいない。ジェニファーは男たちの前に姿を現す。気味悪そうに彼女をみるリーダー格の男に色っぽく話しかける。男は機嫌よく別荘についてきて行為に及ぼうとすると、ジェニファーは風呂に入りたいと言う。ジェニファーが男の家族をいちいち確かめるのが怖い。男は娘が10歳、息子が9歳、どっちも可愛いと話す。ジェニファーは少し笑って聞いていたが、湯船のなかで恍惚となった男の男性自身を切り落とす。男はなにが生じたのかわからず、真っ赤に染まる湯をみて絶叫する。するっと外に出たジェニファーはバスルームをロックし、ガウンを羽織ってタバコをふかす▼レイプした男4人は全員殺される。湖に転落した男の周囲をモーターボートでぐるぐる旋回しながら、恐怖を増幅させていたジェニファーはついに一直線、全速で男に向かう。斧を振りかざして迫るジェニファーの姿が、本作をカルトにした名場面だろう。

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