女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「やり返す女」

2014年9月17日

特集「やり返す女」血まみれギャングママ(1970年 事実に基づく映画)

監督 ロジャー・コーマン
出演 シェリー・ウィンタース/ロバート・デ・ニーロ/ブルース・ダーン

とんがった映画 

 主人公のケイト・バーカーは実在の女性。大酒飲みで生活力のない夫を見限り離婚、4人の息子を引き取って育てた。大恐慌時代の劣悪な環境で育った息子たちは強盗や誘拐に手を染めたがケイト・ママは世間の糾弾から息子たちをかばい、息子たちを助けた。レイプ、近親相姦、ドラッグ中毒、殺人とあらゆる暴力と悪徳の限りを尽くした家族の実話を映画化するに当たって、ロジャー・コーマンがヒロイン、ケイト役を完璧にこなせる女優として抜擢したのがシェリー・ウィンタースだった。配役を決めるときにも彼女に手伝ってもらった、そんなことをしたのはこの映画だけだとコーマンは自伝で書いている。シェリー・ウィンタースはこのとき38歳だった。彼女の出演作をみればどんなに息の長い演技派かわかる。「アンネの日記」「拳銃の報酬」「ロリータ」そして「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)で、ジーン・ハックマンを水底から救出したあと、心臓発作で息をひきとる元水泳選手の主婦。私生活ではマリリン・モンローの数少ない親友のひとりだった▼彼女は面白いエピソードをコーマンの自伝に残している。「ロジャーは予定を遅らせないために脚本のページを破って捨てることで有名な監督だった。あいだのページを飛ばしてもいいように、エンディングを先に撮るという話も伝わっていた。〈血まみれギャングママ〉では一シーンも省かず撮影したが、あと3日時間をくれとわたしは頼んだ。あと10万ドルあれば〈俺たちに明日はない〉に負けない作品になっていた」。ロバート・デ・ニーロは本作に出演したのがきっかけで、いい役がつくようになった。この映画における役作りも徹底したもので、ウィンタースは自分が共演したなかでも最高に熱心な役者だとしてこう言っている「彼はすべて準備を整えて感情を盛り上げてやってくるの。ドラッグ中毒で命を落とす若者を演じるため、中毒が進むにつれ体重を落としたわ。食べるのをやめヴィタミン剤とフルーツ・ジュースと水をほんのちょっと口にいれるだけで、ジャンキーの病的な感じを出したのよ。彼はアメリカのどの俳優より演技に自分を捧げている人間だわ」▼「血まみれギャングママ」はコーマンが語るように、合理性の通じない家族の世界を描いた映画だ。暴力的で破滅的で、まるで文明以前の時代を生きる家族の歴史だ。評論家たちはこの映画を無視したが、コーマンは「自分の好きな映画で、ヨーロッパでは評判がよくきちんとした扱いを受けた。ただし興行的には成功しなかった」と述懐した▼ママの息子たちへの愛は溺愛である。父と兄にレイプされた少女のケイトは「息子がほしい」とつぶやく。息子こそ彼女が受けた暴力と侮辱のうらみをはらしてくれるべき存在だった。このママは強く、息子たちの教師でもあった。彼女が教えるのは知識ではなく、人間のずるさであり浅はかさであり、人間がいかに理不尽で利己主義であるか、またいかに簡単に金のために愛を棄て裏切るインモラルな存在であるかを教えた。だからわたしたちはその上を行かねばならぬ、家族の絆こそが身を守る砦であると。ゴッドファーザーもまっさおだ。ママはてきぱきと判断をくだし、息子たちが失敗したら張り飛ばす。危険な目にあえば容赦なく相手を殺す。身内以外は信用しない。息子が連れてきた女に「娼婦は金でなんでもする」といい、女も別に腹をたてたふうはない。虚飾をはぎとったというのはまだゆるい、肌をやすりで擦るようなきつい空気を、彼らは平気で呼吸している。映画のテンポが早くジメジメしていない。役者たちは熱を放っている。むちゃくちゃな人間であるのに、ひょっとしてこいつらのほうが〈まとも〉ではないかという妖しげで、エッジの効いた磁力を発している。要はとんがっているのである▼誘拐した初老のセレブ、ペンドルベリーを監禁し、話し相手になっているうちに、彼が知性的で情のある男だとわかってくる。ペンドルベリーは君らはなにか事情があってこんなことをするのだろう、世間は不景気で生きにくい時代だからと、あえて憎しみも怨みもギャングらにぶつけない。ペンドルベリーの妻は要求された金を支払う。男は解放しようという息子たちにママは殺せと指示する。息子のひとりはペンドルベリーの目隠しをとりはずし、眼の色をみせてくれと頼む。なぜなら彼は父親と同じ「青い目を」していたからだ▼ラストの銃撃戦は「ワイルド・バンチ」を彷彿させる「無法者たちの滅びの美学」だ。彼らは蜂の巣のようになって死ぬ。感傷のまじる余地のない強烈な「拒否」がそこにある。良識や社会性や道徳やしがらみや好意や人間関係を円滑にするために必要なすべてを、拒否する力が、スクリーンに渦巻いている。

あなたにオススメ