女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2014年9月21日

ガタカ (1997年 SF映画)

監督 アンドリュー・ニコル
出演 イーサン・ホーク/ユマ・サーマン/ジュード・ロウ

遺伝子がつくる階級社会 

 イーサン・ホークがあの陰気くさいニワトリみたいな顔で出てきたらどうしよう、かなわんな、と思っていたのだけど、よかった、わりとフツーの男性になっていて。でもやっぱり影がベタッとトリモチみたいにくっついているのよね。本作の共演でユマ・サーマンは彼と結婚したのだから「縁は異なもの」というのでしょうか。はたまた「蓼食う虫も好き好き」というのでしょうか。この映画の一人勝ちはイーサンでもユマでもなくジュード・ロウですね。胸がジーンとするいいところ、みな彼が持っていっちゃいました。ショックだったのはつい最近、激太りの彼の画像を目にしたこと。「ガタカ」を見たあとだったのに「だれ! このオッサン」って感じ。人間ここまで変わるものでしょうか。過去にはシャーリーズ・セロンが「 モンスター 」で、どうしても彼女だと見分けがつかなかったことがありますが、その後すみやかに現状復帰させ、つつがなく主役を取っています。ジュードも役作りのためだと言っているけどホンマか。キアヌ・リーブスの激太りにも目をおおったことがある。俳優って〈見てくれ〉で生きているといっても過言じゃないでしょう。もういい。あの映像は忘れ「ガタカ」にもどろう。彼が美しかった世界に▼原題も「ガタカ」。DNAの基本塩基であるグアニン、アデニン、チミン、シトシンの頭文字です。もはや差別もここまできたか、というひどい話でしてね。出生前の遺伝子操作によって、優秀な遺伝子のみを組み合わせて生まれた者が「適正者」で、なんの操作もしない自然出産によって生まれた人間は「不適正者」として選別される時代。適正者は知能、体力、容姿とも優れ、なにも手を加えず親から受け継いだ要素をそのまま持って生まれてくるのは劣性を修正していない不適合者なのですって。主人公ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、親が操作に抵抗し自然に産んだから「不適正者」である。宇宙飛行士になるのが夢なのに、宇宙飛行士の資格は適正者でないと与えられない。両親はそれに懲りて、つぎの子(彼の弟)は遺伝子操作で適正者として産んだ。当然能力は段違いでヴィンセントはいつも弟に引け目を感じていたが、ある日海に泳ぎだしたとき、弟に勝ったことから遺伝子が全てじゃないと信じ、宇宙飛行士の夢に挑戦することを決心する▼遺伝子を分析したらなにもかもわかっちゃうのも考えものだな。これからかかる病気と寿命も答えが出る。アンジーはそのデータによって乳房切除したわけでしょ。映画ではヴィンセントの寿命はせいぜい30歳と断定された。不適性者が就業できる仕事は限定され、収入は少なく転職しても同じレベルの仕事にしか就けない。遺伝子操作により新しい階級社会が出現したわけだ。長生きできないとわかったヴィンセントは宇宙飛行士になる手段を模索する。彼はDNAブローカーの仲介で、事故によって両足の自由を失った元水泳金メダリスト、ジェローム(ジュード・ロウ)になりすまし、宇宙局「ガタカ」の局員に採用される。ヴィンセントは毎日ひげを剃り手足の脱毛を行い、けがには細心の注意を払う、尿検査・血液検査のときはストックしたジェロームのそれを提供する、それらのシーンがすごくリアルだ▼いつのまにかヴィンセントとジェロームの間には不思議な連帯感が生じる。生きる夢を失ったジェロームは、もうすぐ死ぬことがわかっているのに宇宙へ飛びたとうとするヴィンセントに、自分の分身が生きているような気がしてくる。ジュード・ロウの、まぶしいような、はかないような、屈折した演技がこの映画の深みを増している。思いがけない事件がヴィンセントとジェロームを追い詰める。ヴィンセントのまつげが殺人現場に落ちていたことから、彼の遺伝子が徹底的に再検査されることになったのだ。この映画はいろんなことを考えさせる。どうせ死ぬのだからなにをしても無駄だとも思わせる。これが頑丈なマット・デイモンや顔立ちの明るいレオさまだと、究極の反逆に打ってでる期待を抱かせるのだけど、ネクラのイーサンでは難しい。ジェロームは、自分が生きている限りいつかヴィンセントは偽物だとわかってしまう、あいつの夢は叶えられなくなる、そう結論して検査に使える一生分の尿と血液、毛髪をストックして焼身自殺、この世からあとかたもなく自分を消すのです。ヴィンセント? あらゆる検査をだまし通して土星に向かい出発しましたよ。ユマ・サーマンは本作では影が薄いですね。彼女は心臓に疾患のある局員で、ヴィンセントの正体を知らず恋仲になるのですけど、ジェロームの存在感の前には付け足しだったな。いいじゃない、そんなこと。イーサンとホントの恋仲になったのだから。でもね、劇中、追跡にあったイーサンとユマがいっしょに逃げるシーンがあるのだけど、心臓の悪い役のユマが走らされゼイゼイ言っても、イーサンはあまりかまってやらない。このシーンを見ていて「そうそうこのふたり、5年で別れたのよね」なんて思い出した。