女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2014年12月18日

特集「大映特撮映画」 大怪獣ガメラ (1965年 ファンタジー映画)

監督 湯浅憲明
出演 船越英二/山下淳一郎/霧立はるみ

大映東京の光り 

 なんでいきなり邦画の「ガメラ」やねん、と思われるでしょうが、これにはちょっとワケがありまして。「シネマ365日」の「われらのダイナソー」特集で、何本か恐竜映画を取り上げました。もともと大好きな恐竜のことなので、かなり一般受けしないと思われる作品についてもジャンジャン書き(人にどう思われたってかまわない)などと、なんか「恐竜の味方は世界に自分ひとり」みたいな悲壮な気分になっていました。ところがやっぱり世間は広い「恐竜100万年」「恐竜グワンジ」で特撮の父レイ・ハリーハウゼンにふれたところ、日本の特撮の「大映特撮映画」をなぜ取り上げないのかとご意見をいただき、以来ズ~と課題になっていました。やっと宿題をはたすときになりました▼それまで「ゴジラ」と円谷英二特技監督を擁する、東宝の独壇場だった怪獣映画に初めて切り込んだののが「大怪獣ガメラ」です。社長である永田雅一が「大映の特撮技術を駆使して怪獣映画ができないはずがない」とラッパを吹いた。それ以前に特撮映画は試みてはいたがひどい失敗でした。「大怪獣ネズラ」という、巨大化したネズミが東京を襲う企画でしたが、撮影のため大量に集めたネズミからでるノミ、ダニの発生で深刻なトラブルとなり中断したのです。つぎなる怪獣映画として浮上したのが本作。永田が自身でタイトルを命名したといういわくつきでした▼ゴジラをしのぐ看板怪獣をつくれという社命です。脚本の高橋二三は「おれに書けないものはない」と豪語し、「亀を飛ばす」という案から出発しました。監督は第二作目の湯浅憲明。一作目「幸せなら手をたたこう」で大コケした湯浅は、これで失敗したら命取りだと腹をくくった。特撮は築地米三郎。脚本もまだできていない段階で、築地に「カメの化け物を出せ」と指示があったといいます。カメというキャラクターは当時小学生でもイヌやネコより簡単に飼える、汎用性の高いペットでした。粗筋はアトランティスの伝説上の怪獣とされていたガメラが、核爆発のショックで海底から突如巨大な姿を出現させ(身長60メートル)、社会を混乱に陥れたが、子供とは心を通わすことのできる怪獣だった、そこで人智を集めた計画によってロケットで火星へ送られるという寓話です。ガメラは四足歩行でありながら二足歩行もでき、いざとなれば空も飛ぶ、手足を引っ込めるとそこからジェット噴射し口は火炎放射器となる、大好物は「火」。ガメラを攻撃すればするほど火と炎を食べてますますエネルギッシュになる。まさに戦後の焼け跡から立ち上がった日本の高度成長の勢いを、一身に具体化したようなパワフルなカメであります▼冒頭は北極圏の空中戦、砕氷船の遭難、ニューヨークや灯台のマットペインティングがカット単位で如実に描かれます。しかしいざ怪獣が登場すると、そこはやはりカメはカメ、動作はゆっくりでないとカメらしくない。でものろのろしてバズーカ砲の集中砲火を浴びるばかりでは迫力がない、そこで空を飛ばせました。くるくる火の輪が旋回しながら空中を駆け巡るのは、線香花火からヒントを得たといいます。あまり予算がなかったので実写も入っています。新潟地震の被災地の映像は実景です。おかしいといえばおかしなシーンはいっぱいあります。カメ好きの子供がガメラに助けられ、人間の攻撃を受けようとするガメラを助けるため、平然と専門家会議に出席し意見を述べる、自衛隊が米軍に核兵器による攻撃を依頼する(未遂におわりますが)、新兵器の冷凍爆弾によるガメラ封じ込めで、ガメラが転覆すると、カメはひっくり返ると動けないから放置しておけば餓死する、これで安泰だという信じられないイージーな結論(もちろんガメラは手足をひっこめ、胴体を超高速で回転させ手足の穴から炎を噴射させながら空中に舞い上がりますが)▼新怪獣にかけた製作陣の意気込みというか、明治生まれ・昭和育ちのバイタリティというか、ガメラをおびきよせ…この戦略がなんと、海上に石油を流し、火をつけ、大好物の火を食おうとガメラが東京湾から小笠原諸島まで泳いでいくという、もうなんでもやってやる、という過剰なまでのサービス精神が燃えさかっています。その結果ガメラはロケットに誘導され、殺されることなく火星に放たれるのです。永田はガメラの咆哮は一本調子でなく、子供がきいたら可哀想になるような哀調も持たせよとか、生みの親としてこまかい注文をつけました。こうして実現したガメラは、シリーズ7作を数え大映東京が放った「看板怪獣」となりました。日本特撮史に残る怪獣は1995年「ガメラ誕生30周年」を記念し、「ガメラ 大怪獣空中決戦」として東宝系で公開されています。

あなたにオススメ